歯科衛生士 2019年10月
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不正咬合予防の第一歩はここから!捕食獲得機能を育む離乳食指導まずは、近年小児のトピックとなっている不正咬合を予防するという視点から考えてみましょう。 あり 中顔面を構成する上顎骨は、頭蓋底に付着し、頭蓋底と一体となっているため、脳、すなわち神経型に類似した成長曲線となります(図3)。その発達のピークは5~7歳とも言われています。このとき、上顎骨はそれまでに獲得した口腔機能に基づいて形作られ、その後の下顎の発達に影響を及ぼします(図4)。 では、この上顎骨の成長期の発達は、なにに左右されるのでしょうか。 日々の臨床では、AAが萌出した時点で口蓋の形態がV字型に近似しているケースや、上唇が下りず、富士山型口唇になったままのケース(図5a)、また、BBBBの萌出時点で叢生となっているケース(図5b)を見ることも少なくありません8)。胎生期の顎骨内では、萌出前の乳歯はまるで叢生のような配列をしていることから、これらは乳歯が萌出した後の問題なのではなく、0~1歳時点での上顎骨の劣成長があったと伺い知ることができます。 また、近年「下顎が後退している過蓋咬合の小児が増えた」という意見も多く耳にします。赤ちゃんは通常産道を通って生まれてくるため、下顎は最後方位にあります。よって、過蓋咬合は顎が後退したのではなく、「新生児の状態からあまり大きく変化していない状態」という見方もできます(その要因の1つとして前抱き抱っこ紐による抱っこの影響9)もあると考えます)。また、過蓋咬合では上唇も機能していないことが多く、骨格上、上顎骨の前方成長を感じることもありません。上唇と上顎骨の発生機序から見ても(次ページ図6)、上顎骨を前方成長させるためには、舌の拳上はもちろんのこと、上唇の役割も重要になることが考えられます。図5 乳歯列期に見られる不正咬合 図4 上顎と下顎の成長の例図3 上下顎の成長曲線上顎の成長は神経系型と一般型(身長)の中間型であるが、下顎は一般型の成長曲線に類似する。先に発達のピークを迎える上顎はその後の下顎の発達に影響を及ぼす。a乳前歯萌出後も上唇が山型のままb乳前歯の叢生上顎に遅れて成長する下顎は、上顎の成長形にともなった発達を示す。中顔面の成長はいつどうやって起こる?(文献7より転載)出生1020(歳)(%)10050一般型神経系下顎上顎079歯科衛生士 October 2019 vol.43

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