歯科衛生士 2019年10月
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Case31長期症例Specialはじめに―メインテナンス移行後、通院継続してもらうには 初診時から主訴解決に向けて歯周治療を実施する期間は、患者さんのモチベーションが比較的高く、口腔内の変化も現れやすいため、健康観を高める意識づけをしやすい時期と言えます。しかし、メインテナンスやサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)に突入してからは、よほどのことがない限り大きな変化はなく、悪化しないよう維持することが目的となるため、ともするとマンネリ化してしまいます。口腔内に対する患者さんの意識が維持できないと、歯科医院への通院が途絶えることもあります。とはいえ、特に歯周病の患者さんに対しては、セルフケアの状態を確認し、歯周組織の小さな変化を見逃さず、悪化してきた時にいつまた治療の介入をしていくのかを検討するなど、継続したメインテナンスが必要であるのはたしかです。 本症例では、メインテナンスで患者さんと長期にわたりかかわり続けることで、当初主訴の解決だけを望んでいた患者さんが、歯を大事にすることが健康につながると考えるようになり、意識が大きく変化しました。ちょうど当院が患者担当制に変わったばかりの頃で、筆者自身も患者さんとのかかわり方を試行錯誤していた時期だったため、そこから患者さんと共に成長してきたように思っている症例です。通院経験がほとんどない、重度歯周炎の患者さん 患者さんは初診時52歳女性です(表1)。院長が勤務医時代から診ている患者さんのご紹介で来院されました。お仕20年のかかわりをつうじて、患者さんの健康観が変化した症例[キーワード] メインテナンス、SPT、健康観、行動変容、傾聴●53歳●1986年鶴見大学女子短期大学部保健科卒業、2016年早稲田大学人間科学部健康福祉科学科卒業●歯科衛生士歴:33年目●勤務形態:常勤●勤務先:「口腔の健康を通して全身の健康に寄与する」という理念のもと、開業以来27年間、歯の大切さを伝える、セルフケアをサポートすることに力を入れ、診療を行っている。3年前に現在地に移転。横田志保さんShiho Yokota横田歯科医院[東京都]歯科衛生士日本歯周病学会認定歯科衛生士中野予防研修会スタディーグループKOKO今回症例を紹介してくれるのは……表1 患者さんの基本情報年齢・性別52歳(1999年7月初診時、現在71歳)、女性主訴上の前歯が咬み違えてグラグラになった。全体的に歯の隙間が気になる歯科的既往歴88抜歯、66カリエス処置を実施した以外、歯科医院への通院経験はほとんどなし全身的既往歴特になし89歯科衛生士 October 2019 vol.43

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