歯科衛生士 2019年11月号
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TOPIC平穏死に歯科はどう  近年、わが国の医療現場では、いわゆる終末期を他の状態と区別せず、食べられない状態になれば急性期などと同様に点滴や経管栄養(胃ろうなど)で水分と栄養を補給する「延命処置」が取られることが日常的に行われてきました。しかし、内閣府の調査によると、「病気が治る見込みがなく、死期が近くなった場合、延命治療は行わず自然にまかせてほしい」と答えた65歳以上の割合は91.1%に上ります(平成29年版高齢社会白書)。また、2003年以降国内死亡者数は100万人を超え、“多死社会”となり、これから20年間でさらにその数は増加すると変わりつつある“終末期”へのまなざし言われています。そのようななかで、昨年には厚生労働省が「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスにおけるガイドライン(改訂版)」を示し、ついに終末期(人生の最終段階)に向き合おうとする動きが活発化してきました。 議論がはじまるきっかけのひとつとなったのが、およそ10年前、ひとりの特別養護老人ホーム(以下、特養)の常勤配置医が記した『「平穏死」のすすめ―口から食べられなくなったらどうしますか』(講談社)という1冊の本で、これまでの老衰への医療の介入に疑問を呈したことでした。その著者・石飛幸三特別養護老人ホーム・芦花ホーム[東京都]常勤医1935年生まれ。1961年慶応義塾大学医学部卒業。同大外科学教室在籍時にドイツ・ザウアーブルッフ記念病院にて血管外科医として勤務。1972年東京都済生会中央病院にて、食道遊離移植や脳梗塞予防を目的とした頚動脈内膜摘除術を手掛ける。1993年同院副院長。2005年より現職。終末期の高齢者への胃ろうなどの治療行為に疑問を持ち、「平穏死」の実現につながる看取りの在り方を世に問うた『「平穏死」のすすめ―口から食べられなくなったらどうしますか』(2010年、講談社)がベストセラーに。石飛幸三Kozo ISHITOBIどこまでも死に立ち向かう中で誰のための医療なのかがわからなくなった歯科衛生士 November 2019 vol.4378

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