歯科衛生士 2019年11月号
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症例をシェアして、ステップアップ!Case32はじめに―歯科衛生士による情報提供の意義とは 8020という言葉が言われて久しいですが、これからの日本では、健康寿命をできるだけ長く保つための歯科医療が求められています。そのためには、これまでのような歯科衛生士の経験と勘だけ に基づくメインテナンスではなく、規格化された資料採取とリスク診断をもとに、個々の患者さんに情報提供を行うことで行動変容を促し、患者さんが主体的に予防歯科医療に取り組むメインテナンスに変わることが重要です。 現在、当院では「KEEP28(8028、健康でむし歯や歯周病のない歯がきれいなまま80歳まで維持している)」というコンセプトレベルでの予防医療を提供し、地域のむし歯や歯周病をなくし、健康寿命を伸ばすことを目指しています。具体的には、山形県の日吉歯科診療所で学んだメディカルトリートメントモデル(MTM)*を実施しています。 今回は、歯周治療に不安を持つ患者さんに対し、ツールを活用しながら情報提供を行ったうえで歯周治療を実施した後、パーソナライズ(個別)メインテナンスに移行し、病状安定と患者さんからの満足を得られた症例をご紹介します。歯周病に対する強い不安を抱えた患者さん 患者さんは、初診時52歳の男性会社員です(表1)。主訴は左下の痛みでした。以前から他院に通院しており、そこで歯周病の指摘を受け、歯周治療、SPTを受けていたものの、時折腫れや出血を繰り返したうえに、₇₆が抜歯となりました。このままでは全部の歯がなくなる情報提供や説明をていねいに行い、患者さんの不安を和らげた症例[キーワード] 重度歯周炎、情報提供、説明、患者さんの不安、MTM●34歳●2005年大阪産業大学附属歯科衛生士学院専門学校卒業●歯科衛生士歴:14年目●勤務形態:常勤●勤務先:阪神地域のむし歯と歯周病をなくすという理念のもとに地域住民の健康増進に取り組んでいる。また、社員のやりがいと成長、幸福を実現するサポートや、日本歯周病学会認定歯科衛生士を取得できる職場づくりにも取り組む。 大月香奈さんKana Otsuki塚口むらうち歯科・矯正歯科[兵庫県]歯科衛生士日本歯周病学会認定歯科衛生士日本口腔インプラント学会会員今回症例を紹介してくれるのは……表1 患者さんの基本情報*MTM:初期のリスク評価から、個々の患者に合わせた予防プログラムの立案、最小侵襲治療などを行い、定期的なメインテナンスに至るまでの流れ。 年齢、性別52歳(2016年1月初診時)、男性主訴昔から歯周病といわれていた。左下に痛みがある現病歴歯科医院に10年ほど通院しているものの歯周病が良くならない。さらには抜歯となり、歯周病に対する不安が強い歯科的既往歴他院で歯周治療、抜歯の経験あり。10年ほど通院していた。下顎臼歯部には充填処置あり全身的既往歴特記事項なしリスクファクターブラキシズム、8年前に禁煙職業会社員91歯科衛生士 November 2019 vol.43

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