歯科衛生士 2019年12月号
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Illustration:大野文彰口腔と全身疾患の関連性が次第に明らかになってきました。本コーナーでは、疾患ごとに、現在どこまで口腔との関連性が明らかにされているのか、問題とされていることはあるのか、さまざまなエビデンスを紹介しながら実態をつかみ、一緒に考えていきたいと思います。関野 愉Satoshi SEKINO日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座准教授・歯科医師第6回最終回となる今回は、これまで取り上げてきたもの以外の口腔と関連があるといわれている全身疾患について、文献とともにみていきます。口腔衛生不良は全身に悪影響を与える 厚生労働省の「平成29年人口動態統計」によると、日本人の死因の1位は悪性新生物です。そして2位は心疾患、3位は脳血管疾患、4位は老衰、5位は肺炎、6位は不慮の事故、7位は誤嚥性肺炎となっており、これまで取り上げた疾患が上位に入っていることがわかります(図1)。 本連載では、これまで口腔と全身との関連に関してエビデンスに基づいた内容を提示してきました。近年はそれらの関係についてエビデンスのレベルが低いとの評価もされていますが、第1回でもお伝えしたように、これはあくまで「研究のデザインが完全とは言えないため、後続の研究により結論が変わる可能性が高い」という意味で、完全に否定されているという意味ではありません。また、たとえば、患者さんによっては歯周治療がきっかけで糖尿病が劇的に改善したというケースもあります。したがって、歯周病や口腔衛生不良は全身に悪い影響を及ぼすことはあっても、けっして良い影響は与えないということは言えるわけです。 そして、下図の死因からもわかるように、今まで取り上げてきた全身疾患は、有病率が高いために比較的研究対象が見つけやすいという利点がありました。しかしながら、歯周疾患や口腔衛生との関連が疑われる全身疾患には有病率が高いものだけではありません。有病率が低いと研究対象が限られるため、どうしても研究の数も少なくなります。そのため十分に検討されたとは言い難いトピックが多いのですが、それでも無視することはできません。次ページからは、そのような全身疾患について、それぞれ重要な文献をピックアップしながらみていきたいと思います。口腔その他の全身疾患図1 死因順位(平成29年)悪性新生物(腫瘍)27.9%心疾患15.3%脳血管疾患 8.2%老衰 7.6%腎不全 1.9%自殺 1.5%血管性等の認知症 1.5%誤嚥性肺炎 2.7%不慮の事故 3.0%肺炎 7.2%その他 23.2%(文献1より作成)67歯科衛生士 December 2019 vol.43

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