歯科衛生士 2019年12月号
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症例をシェアして、ステップアップ!Case33はじめに―歯周治療にトラウマがある場合どう対応するか? 歯周治療に対して“痛い”“怖い”という印象を持つ患者さんは多いと思います。その印象によって、歯科受診を継続できないことは、口腔内の健康を損なうだけでなく、全身の健康にも影響を及ぼします。 本症例の患者さんも、過去に受けたスケーリング・ルートプレーニング(SRP)時の痛みがトラウマになっていました。そのような患者さんに対して、精神面と技術面での配慮を心がけながらSRPを行ったことによって、信頼関係が構築でき、歯周状態の良好な経過を得られましたので、ご紹介します。歯周治療を受けられないまま放置した結果、歯周病が進行 患者さんは初診時40歳の男性です(表1)。半年前からブラッシング時に出血があり、歯石も付いていることに気がついていましたが、2年前に前医でSRPを受けた際に痛みが強かった経験があり、歯石除去に対して非常に恐怖心があったので放置していました。この患者さんの妻は当院に通院されており、SRPを受けたときに無麻酔下でも痛くなかったという話を妻から聞いて、当院で歯周治療を受けることにしました。 次ページ図1~3に初診時の歯周状態の結果を示します。いずれの所見からも歯周病の進行が認められ、歯科医師により広汎型中等度慢性歯周炎と診断されました。過去に口腔衛生指導(OHI)を受けた経験はあるものの、適切なブラッシング方法とモチベーションが定着せず、プラークコントロール不良のまま経トラウマのある患者に、無麻酔で痛みの少ないSRPを実施した症例[キーワード] トラウマ、無麻酔、SRP、歯周治療、歯科衛生ケアプロセス●37歳●2002年関西女子短期大学歯科衛生学科卒業●歯科衛生士歴:17年目●勤務形態:非常勤●勤務先:岡山県倉敷市に位置し、フリーランス歯科衛生士の指導のもと、歯周治療に力を入れている。滅菌やメインテナンスにも医院全体で取り組んでいる。奥野友紀さんYuuki Okuno山脇歯科医院[岡山県]歯科衛生士日本歯周病学会認定歯科衛生士日本口腔インプラント学会会員スタディーグループPASSION今回症例を紹介してくれるのは……表1 患者さんの基本情報年齢、性別40歳(2016年9月初診時)、男性主訴ブラッシング時に出血がある。歯石除去をしてほしい歯科的既往歴2年前、前医で歯周病であると説明されて歯周基本治療を受けたが、SRPの際、痛みを強く感じたので、途中で局所麻酔をしてもらった。しかし、痛みへの恐怖心が強く残ってしまったことが理由で、SRP終了後、 受診を中断した全身的既往歴特記事項なし喫煙歴20~38歳までの18年間(30本/日)。現在は禁煙している93歯科衛生士 December 2019 vol.43

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