歯科衛生士 2020年1月号
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Illustration:うつみちはる糖尿病患者の歯周病管理では、全身状態を把握する方法として「お薬手帳」や「糖尿病連携手帳」の確認は重要な情報源の一つです。各チェックポイントと活用の実際をご紹介します。中澤正絵 Masae NAKAZAWA医療法人盟陽会 富谷中央病院 歯科衛生士長歯科衛生士・宮城県糖尿病療養指導士角川智子 Tomoko KAKUGAWA医療法人盟陽会 富谷中央病院 副院長糖尿病内科白井勇太 Yuta SHIRAI医療法人盟陽会 富谷中央病院糖尿病専門医[監修]糖尿病診療記録のみかた・読みかたお薬手帳&糖尿病連携手帳を歯周病管理に役立てるメディアでも糖尿病と歯周病の関係が報道される機会が増え、多くの糖尿病患者が歯科に訪れるようになりました。第1回目は、糖尿病の基礎知識を確認していきましょう。まずは病態を知ろう!第1回 日本糖尿病学会の定義では、「インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群」とされ、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高い状態が続く病気です。インスリンのはたらきが低下したりインスリンの分泌が少なくなると、血糖値が上昇してさまざまな合併症を引き起こします。 糖尿病は主に1型と2型に分類されます。1型糖尿病は、インスリンをつくる膵すいβ細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなる疾患です。はっきりとした原因は不明ですが、生活習慣とは関係ありません。日本人の約1,000人に一人と稀な病気です。インスリン治療が必要で、治療をしないと死に至ります。 2型糖尿病はインスリン分泌の低下とインスリン作用不足により高血糖となる疾患です。わが国の糖尿病患者の約96%は2型糖尿病で、日本人の10人に一人が罹患していると推定されています。生活習慣と遺伝素因の両方が原因と考えられており、食事療法、運動療法などの生活改善と薬物療法が主な治療です。 前述したように、実際にお会いする患者さんのほとんどは2型糖尿病ですが、1型糖尿病患者さんの場合、歯科治療時に食べられないからといって安易にインスリン治療を中断すると危険なため、注意する必要があります。 糖尿病の本当の恐ろしさは、その合併症にあります。糖尿病の合併症はじつに多岐にわたりますが、代表的なものは動脈硬化性の疾患である大血管障害です。糖尿病は、比較的初期から脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な病気を起こしやすいことがわかっています。 また、長期にわたり高血糖状態が続くと、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症など「細小血管障害」と呼ばれる糖尿病特有の合併症が出てきます。これらが原因で、腎不全から透析療法が必要になったり、網膜症から失明を引き起こしたりします。糖尿病は大きく分けて2つのタイプに分かれる●糖尿病患者の約96%を占める●インスリン分泌低下とインスリン作用不足により発症する●生活習慣と遺伝素因が原因とされる●食事療法、運動療法、薬物療法が必要●糖尿病患者の約1%を占める●インスリンをつくる膵β細胞が破壊されインスリンが分泌されなくなり発症する●生活習慣とは関係ない●インスリン治療が必要65歯科衛生士 January 2020 vol.44

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