歯科衛生士 2020年1月号
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この炎症に力は関係している? いない?咬合性外傷のサイン 1特集 日常臨床において採得した基礎資料の所見を評価する際、歯科衛生士は、歯周組織の炎症や歯肉の退縮、歯肉縁上縁下のプラークや歯石の存在、歯槽骨の吸収など、無意識に歯周病に関することに重きをおいて口腔内を診ている傾向があるのではないでしょうか。 これらの病変を発見した際に、まずは歯周病原細菌のコントロールを行うことが大前提ですが、それでも改善が見られない場合は、歯周病を増悪する重要な局所的修飾因子として「力」が大きく関与しているケースも少なくありません。そのため、炎症だけでなく力にも目を向け読み解く力が求められます。 では、実際にどのようにして「力」の影響を判断したらよいのでしょうか。まずは下野先生に「力」のサインの基本的な情報を学び、目に見えない力をどのようなステップで診て、どのような着眼点を持つとよいのか、実際のケースを通して一緒に考えていきましょう。力の兆サイン候を読み取る森田久美子 大川歯科医院・歯科衛生士 咀嚼や嚥下、ブラキシズム時の咬合運動によって、歯周組織(つまり歯根膜、歯槽骨およびセメント質)の負担能力を超えた「異常な咬合力」が加わると、その歯周組織に外傷性の変化が生じます。これを咬合性外傷といいます。 咬合性外傷は健康な歯周組織でも歯周病によって減弱した歯周組織でも起こります。 咬合性外傷を確定診断するためには、広い範囲の歯周組織を外科的に切除しなければなりませんので、日常臨床ではエックス線的特徴や臨床症状から咬合性外傷を推定して診断することになります。エックス線的特徴では歯槽硬線の肥厚と歯根膜空隙の拡大が咬合性外傷を強く疑うサインです。咬合性外傷に特有の臨床症状とはいえないものの、咬合性外傷を示唆する変化として、歯の動揺、フレミタス、咬耗、ファセット、骨隆起、歯の破折、セメント質剥離などがあります。下野正基 東京歯科大学・歯科医師咬合性外傷の診断法咬合性外傷が認められる歯において動揺度が1度以上あり、かつエックス線所見で歯根膜腔の拡大、骨吸収が認められる歯については、咬合性外傷と診断する。その他の所見としては、①過度の咬耗、②歯の病的移動、③歯の破折、エックス線所見での④歯槽硬線の消失・肥厚、⑤歯根吸収を伴うことがある。(特定非営利活動法人日本歯周病学会(編)『歯周治療の指針 2015』P.28より)咬合性外傷って?(日本歯周病学会による)Overview歯科衛生士 January 2020 vol.4430

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