歯科衛生士 2020年1月号
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症例をシェアして、ステップアップ!Case34はじめに―リスクファクターが多いほど、歯周治療は困難に 喫煙は歯周病の環境因子から見た最大のリスクファクターであり、喫煙者は非喫煙者に比べて2~8倍歯周病に罹患しやすく、歯周治療の反応を低下させることが報告されています1)。また、歯周病で生じる炎症のケミカルメディエーターであるTNF-αはインスリンの抵抗性を増大させ、糖尿病を悪化させる可能性が報告されています1)。 今回の患者さんは、「喫煙」と「糖尿病」のリスクファクターを有しており、歯周治療が困難であることが予想されました。さらに、一見強面で威圧感があり、信頼関係の構築が難しい患者さんであり、歯周治療を進めていくうえで、どのようにアプローチすればよいかたいへん悩まされました。それでも、試行錯誤を繰り返していくなかで、信頼関係を築くことができた結果、禁煙支援に成功し、歯周治療も良い結果が得られたので報告します。他院での治療後放置した結果、歯周病が進行 患者さんは初診時67歳の男性です(表1)。2週間前から₅に咬合痛があり、2日前から痛みが強くなったということでした。他院で抜歯やう蝕治療は受けていたものの、定期通院には至らず、そのまま放置されていました。 次ページ図1~3に初診時の歯周状態の結果を示します。歯周検査で主訴である₅口蓋側に深い歯周ポケットと歯肉歯周治療により信頼関係を築き、禁煙支援にも成功した症例[キーワード] 禁煙支援、糖尿病、ラポール、歯周治療●56歳●1982年日本女子衛生短期大学卒業●歯科衛生士歴:22年(13年間専業主婦)●勤務形態:非常勤●勤務先:岡山市内南部の住宅街にあり、理念である「お口の健康を通して、人の幸せに貢献する」を心にとめて毎日の診療に励んでいる。赤ちゃんからお年寄りまで来院される小児・一般歯科医院。山本浩美さんHiromi Yamamoto和気歯科医院[岡山県]歯科衛生士日本歯周病学会認定歯科衛生士日本臨床歯周病学会会員日本医療機器学会第2種滅菌技士苺の会、TDSC今回症例を紹介してくれるのは……表1 患者さんの基本情報年齢、性別67歳(2012年10月初診時)、男性主訴5の咬合痛現病歴5が初診2週間前から咬むと痛くなり、2日前から痛みが強くなった歯科的既往歴66抜歯、234575う蝕治療。6は、2010年3月他院で抜歯。抜歯後の治療のため半年後に来院するように言われていたが、困らなかったので放置していた全身的既往歴高血圧症、糖尿病、高脂血症のため内科で治療中。2008年頃から服薬喫煙歴18歳から初診時まで(49年間、約30本/日)ブラッシング習慣1日1回(朝食前)嗜好酒、タバコ職業定年まで事務職。現在は無職81歯科衛生士 January 2020 vol.44

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