歯科衛生士 2020年2月号
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症例をシェアして、ステップアップ!Case35はじめに―侵襲性歯周炎に歯周基本治療で挑む 侵襲性歯周炎は、全身的には健康ですが、急速な歯周組織破壊や家族内集積があることを特徴とする歯周炎です1)。年齢に比較して歯周組織破壊が著しい侵襲性歯周炎は、歯周治療に対する反応が不良となる場合が多いと考えられており1,2)、一般的に歯周外科治療や原因菌の細菌診断、抗菌療法などが治療の選択肢になります2,3)。しかし、当院では広汎型侵襲性歯周炎1)の症例に対し、機械的なプラークコントロールを主体にした歯周基本治療を行って、臨床改善が認められました。今回は、初診から約4年が経過した侵襲性歯周炎の患者さんに対する歯周基本治療の取り組みを、歯科衛生士の立場から報告します。年齢の割に歯周組織破壊が進行した侵襲性歯周炎 患者さんは初診時21歳の男性です(表1)。2015年に他院で侵襲性歯周炎と診断され(図1)、歯周病専門医での治療を希望し来院されました。初診時は、前医によるブラッシング指導とスケーリングの効果で、前歯部の強い発赤が軽減していました(次ページ図2)。しかし、侵襲性歯周炎に対し歯周基本治療で取り組んだ一症例[キーワード] 侵襲性歯周炎、プラークコントロール、歯周基本治療●51歳●1991年北海道医療大学歯学部附属歯科衛生士専門学校卒業、2009年武蔵野大学通信教育部人間科学部人間科学科卒業、 2011年武蔵野大学大学院通信教育部人間学研究科人間学専攻修士課程修了●歯科衛生士歴:30年目 ●勤務形態:常勤●勤務先:札幌市中央区で開業する、日本歯周病学会歯周病専門医・指導医、認定歯科衛生士がいる歯科医院。佐藤昌美さんMasami Sato医療法人社団池田歯科クリニック[北海道]歯科衛生士日本歯周病学会認定歯科衛生士日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士 今回症例を紹介してくれるのは……表1 患者さんの基本情報図1 来院前の口腔内写真※本報告は患者さんの許可を得て作成し、第62回春季日本歯周病学会学術大会(2019年5月25日)において、ポスター発表した内容に一部追加・改変して掲載するものです。年齢・性別21歳(2016年1月初診時)、男性主訴前歯が空いて気になる、全体的に歯ぐきが腫れる現病歴全顎的に歯肉腫脹を自覚しているが、特に痛みはない歯科的既往歴他院で侵襲性歯周炎と診断され、ブラッシング指導とスケーリング後に専門医での治療をすすめられ、当院に来院全身的既往歴特になし家族歴父親は歯周炎のため歯を喪失し、義歯を装着している喫煙習慣なし2015年1月に撮影した正面観。口腔清掃不良のため、全顎的にプラークと歯石が付着している。歯肉腫脹と著しい歯槽骨吸収が認められ、侵襲性歯周炎と診断された。(写真提供:K・FUKUDAデンタルクリニック 福田啓輔先生)81歯科衛生士 February 2020 vol.44

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