歯科衛生士 2020年3月号
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Illustration:サタケシュンスケ、福々ちえ[第3回] 口腔機能発達不全症口腔機能の重要性を説明しましょう平成30年4月より保険収載され、昨今注目を集めている口腔機能発達不全症。本人だけでなく保護者も気づいていないことが多いため、気づきを与えるためにも歯科医院での情報提供が重要です。本稿では、そういった保護者への説明方法について、ご紹介します。口腔機能発達不全症の基礎知識をおさえておこう私たちが生きていくためには、お口の機能が欠かせない 食べることや話すこと、呼吸することは私たちが生きていくうえで不可欠であり、これらのほとんどはお口が担う機能(口腔機能)です。歯や舌、唇、頬、喉がうまくはたらくことでこれらの機能が成立します。 口腔機能発達不全症とは、15歳未満の小児において、食べること、話すこと、その他の口腔機能について、正常に機能を獲得していない場合に診断される疾患名です(表1)1)。平成30年4月より保険収載され、その機能獲得のための管理および訓練に対して、小児口腔機能管理加算が算定できるようになりました。 口腔機能の発達は全身の健康と密接なかかわりがあり、またその発達には個人差があります。そのため多様な支援が必要ですが、従来の歯科保険医療の範囲とは異なるため、まずは病態を観察することが大切です。まずは観察が重要 たとえば、上記の協調運動を阻害してしまうほど歯並びが悪い場合は、歯の位置(形態)を治す必要があります。一方、歯並びなどお口の形態には問題がない場合でも、食べ物をうまく飲み込めなかったり、正しい発音ができなかったりする子もいます。今回はそうした機能が十分に育っていない子に焦点を絞って解説していきます。その子の口腔機能が育っていない原因が、単純にその機能を習得できていないからなのか、機能の習得を邪魔する癖(習癖)があるせいなのかまずは見ていきましょう。チェックリストで確認したら、情報提供しよう 口腔機能の発達や認められる症状、習癖の程度は個人差が大きいため、はじめは何に注意して観察するべきなのか、どのぐらい習癖があれば指導してよいか、わかりにくいかもしれません。そこで、多様な症状がある口腔機能発達不全症に対して、簡単に問題点を発見するためのチェックリストが日本歯科医学会により作成されています(図1)1)。これを使ってチェックすることで、歯科医師が口腔機能発達不全症と診断し、かつ小児口腔機能管理加算が算定できるかどうかを判断できます。 また、本疾患は本人や保護者が自覚していないことが考えられますが、「口腔機能発達不全症」という疾患名を直接伝えると、発達が不良なのかと驚かせてしまう可能性もあります。そのため本稿では、本人や保護者の不安を煽らずにわかりやすく伝える方法をご紹介します。病態「食べる機能」、「話す機能」、その他の機能が十分に発達していないか、正常に機能獲得ができておらず、明らかな摂食機能障害の原因疾患がなく、口腔機能の定型発達において個人因子あるいは環境因子に専門的関与が必要な状態。病状咀嚼や嚥下がうまくできない、構音の異常、口呼吸などが認められる。患者には自覚症状があまりない場合が多い。表1 口腔機能発達不全症の特徴(文献1より転載)歯科衛生士 March 2020 vol.4470

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