歯科衛生士 2020年3月号
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症例をシェアして、ステップアップ!Case36はじめに―歯肉退縮による露出根面にどう対応するか 歯周治療によって歯肉退縮が起こると、根面が露出し、その結果、う蝕や知覚過敏が生じる可能性があります。また、プラークコントロールも難しくなります。そのため、メインテナンスやSPT時には歯肉退縮をできるだけ進行させないようにするとともに、う蝕や知覚過敏が生じた場合はそれらに対応することも必要となります。 今回は、他院で歯周治療を受けた後、当院に初診で来院した際に露出根面が認められた慢性歯周炎の患者さんについて、初診から現在にいたるまでの経過について報告します。頬側・唇側を中心に、全顎的に露出根面がみられた 患者さんは初診時46歳の女性です(表1)。幼少期にう蝕により歯科治療の経験があるそうで、その後もブラッシングをしていると出血することがあったものの、そのまま放置していたとのことです。20代後半のとき、歯肉の違和感から他院を受診したところ、歯周病と診断され、歯周治療を行い、その後3ヵ月に1回メインテナンスケアを受けていました。しかし、担当医の交代などがあり、歯肉退縮が進行し、根面の露出が大きくなり、知覚過敏が消えず、3ヵ月前より₆に違和感が生じていました。このままでよいのだろうかと不安がつのり、転院を希望し当院に来院されました。 初診時の検査所見を次ページ図1~3に示します。残存歯は7-77-7で、残存歯数は28歯です。口腔内所見から、一見プラークコントロールは良好に見えますが、歯間部・隣接面の歯肉はプラークの付着により炎症が見られます。露出根面は全顎的に認められ、頬側・唇側の根面露出根面がみられた慢性歯周炎患者の9年経過症例[キーワード] 根面露出、歯肉退縮、慢性歯周炎、SPT●39歳●2008年東京都歯科医師会附属歯科衛生士専門学校卒業●歯科衛生士歴:12年目●勤務形態:常勤●勤務先:予防や歯周治療をメインとした一般歯科診療所。常勤の歯科衛生士3名は患者担当制で業務を行っている。田中浩子さんHiroko Tanaka景山歯科医院[東京都]歯科衛生士日本歯周病学会認定歯科衛生士中野予防歯科研修会今回症例を紹介してくれるのは……表1 患者さんの基本情報※本報告は患者さんの許可を得て作成し、第62回春季日本歯周病学会学術大会(2019年5月25日)において、ポスター発表した内容に一部追加・改変して掲載するものです。年齢、性別46歳(2010年10月初診時)、女性主訴左下奥歯に違和感がある。長く伸びた歯と下の前歯の歯石が気になる歯科的既往歴う蝕治療、歯周治療の既往がある。他院でメインテナンスケアを受けていたが、歯肉退縮の進行により根面の露出が大きくなり知覚過敏が消えず、転院を希望し当院に来院した全身的既往歴全身的に健康であり、特記すべき事項はなし喫煙歴なし83歯科衛生士 March 2020 vol.44

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