歯科衛生士 2020年5月号
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CASE1本欄では、臨床に取り組まれている歯科衛生士の方にご登場いただき、日頃から後進の育成にあたっているアドバイザー委員のアドバイスを受けながら症例報告をまとめていただきます。臨床を振り返り、さらなるステップアップにつなげていただく場、また症例をシェアすることでともに学び合える場としていただけることを期待しています。[アドバイザー委員(50音順、敬称略)]奥山洋実/小林明子/塩浦有紀/田村 恵/山口幸子誌上ケースプレゼンテーションCASE PRESENTER小川希和子Kiwako Ogawa(医)くらのうえ市丸歯科新鳥栖インプラント歯周病センター[佐賀県]・歯科衛生士日本歯周病学会認定歯科衛生士日本口腔インプラント学会専門歯科衛生士●49歳●1991年福岡歯科衛生専門学校卒業●臨床経験年数:28年●勤務形態:常勤●所属学会・スタディーグループ:日本歯周病学会、日本口腔インプラント学会、日本臨床歯周病学会、佐賀県歯科衛生士会●勤務先:5Zero Projectとして「むし歯ゼロ」「歯周疾患ゼロ」「欠損増加ゼロ」「インプラント周囲疾患ゼロ」「不正咬合ゼロ」の実現を目指し、地域住民の口腔健康の維持、向上に貢献するために診療に取り組んでいる。インプラント周囲炎の治療における歯科衛生士の役割プラークコントロール、デブライドメント、継続したSPTによって寛解させた症例 [キーワード] インプラント周囲炎、歯科衛生士、プラークコントロール、デブライドメント、SPT表1 インプラント周囲疾患のリスク因子年齢、性別62歳(2009年5月初診時)、女性主訴下顎臼歯部におけるインプラント治療に対するセカンドオピニオンを聞きたい歯科的既往歴下顎臼歯部は30代の時にう蝕で抜歯した。歯周病の自覚はなく、前医でも指摘されていなかった全身的既往歴特記事項なし喫煙歴なし表2 患者の基本情報歯周病関連因子●喫煙●糖尿病●不十分な プラークコントロール●歯周炎の罹患歴●残存する歯周炎●SPTの不徹底医原性の因子●不適切な外科手術●不適切なインプラントの埋入位置●不適切な補綴設計●不適合補綴装置●余剰セメントや外来異物インプラント治療における局所因子●骨の不足●角化粘膜の不足●インプラントの形状はじめに インプラント周囲疾患は歯周疾患と類似した細菌性の炎症性疾患です。罹患率が比較的高く、インプラント治療における併発症として、近年問題視されています1-3)。リスク因子には、喫煙、糖尿病、不十分なプラークコントロールなどの歯周病関連因子や、不適切な補綴設計、不適合補綴装置や余剰セメント等の医原性の因子が挙げられます(表1)。本疾患に対する標準的治療法は確立しておらず、長期報告も少ないのが現状です。 過去に、私たちは歯周炎罹患歴および不十分なプラークコントロール等のリスク因子が関与したと考えられるインプラント周囲疾患を加療し、比較的長期において良好な状態を維持している症例を報告しました4)。本稿では、本症例における₇部インプラント周囲炎について、特に歯科衛生士業務に焦点をあてて報告します。初診時の初見 患者さんは、初診時62歳の女性です(表2)。主訴は下顎臼歯部におけるインプラント治療に対するセカンドオピニオンを聞きたいということでした。全身的既往歴はなく、非喫煙者でしたが、歯周炎が進行していました(次ページ図1~85歯科衛生士 May 2020 vol.44

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