歯科衛生士 2020年6月号
1/8

Illustration:溝呂木一美 歯科医院での口腔衛生指導(Oral Health Instruction:OHI)と施設でのケアでは、まず、初めてお会いする対象者のかかわり方からまったく違います。 歯科医院に来られる初診の方は、受診を自分で決めて、診療室で行われることをある程度覚悟しています。家族に説得されてしぶしぶ受診しているとしても、歯科医院に行くことはわかって来院されています。診療室のドアの向こうにはチェアユニットがあるとわかっていて、そこにかければ、ほとんどの方は口を開けてくださると思 診療所に来られる患者さんは、診療所で歯科衛生士のプロケアを受けて、それ以外の日常のケアはご自身で行わいます。 一方、施設に入所された方は、はじめのうちは住環境も、周りの人たちもいままでと違うことに、戸惑い、緊張しています。そして、ほとんどの場合、ご本人の希望ではなく生活習慣の一つとして、私たち職員が食後に口腔ケアを行います。ご本人にしてみれば、「口の中を見てほしいとお願いしてないのに、なぜだか口を見られる」という状況です。受診に対して、心の準備もできていない方も少なくありません。れる方がほとんどです。OHIでは、自分でプラークを落とせるようにブラッシングやフロスの指導を直接行います。他職種に伝わるの伝えかた渡辺DH   が実践するみんなで行う口腔衛生管理他職種の協力得ずして、改善なし!本誌2019年11~12月号の石飛幸三先生×米山武義先生の特別対談では、特別養護老人ホーム・芦花ホームでの「平穏死」の取り組みを支える力として、常勤歯科衛生士・渡辺三恵子さんが看護職と介護士をつなぎ、施設全体で口腔ケアに取り組んだ経緯が紹介されました。口腔衛生管理の成功には、歯科衛生士が直接行うケアだけでなく、日々のケアを担い、多くの時間をかかわる介護士さんに納得してもらい協力を得ることが不可欠です。本連載では、施設等で歯科衛生士が口腔衛生管理を行ううえで不可欠な他職種とのコミュニケーションについて、渡辺さんに詳しくご解説いただきます。(編集部)渡辺三恵子 Mieko WATANABE世田谷区立特別養護老人ホーム 芦花ホーム [東京都] 歯科衛生士第1回診療所のOHIと施設の口腔衛生管理、どこがどう違う?1受診の意志がそもそもないなかで対峙する対象者の違い介護士など、目の前にいない多数がかかわるセルフケアの担い手の違い“”ケア歯科衛生士 June 2020 vol.4490

元のページ  ../index.html#1

このブックを見る