歯科衛生士 2020年6月号
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CASE2本欄では、臨床に取り組まれている歯科衛生士の方にご登場いただき、日頃から後進の育成にあたっているアドバイザー委員のアドバイスを受けながら症例報告をまとめていただきます。臨床を振り返り、さらなるステップアップにつなげていただく場、また症例をシェアすることでともに学び合える場としていただけることを期待しています。[アドバイザー委員(50音順、敬称略)]奥山洋実/小林明子/塩浦有紀/田村 恵/山口幸子誌上ケースプレゼンテーションCASE PRESENTER小宮純子Junko Komiyaうめむら歯科医院[東京都]歯科衛生士●53歳●1987年北原学院歯科衛生士専門学校卒業●臨床経験年数:27年●所属学会・スタディーグループ:日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会、日本顎咬合学会、日本顕微鏡歯科学会●勤務先:「歯周病の治療管理を基本に永続性のある上質な医療を提供する」という理念に基づいた診療を行っている。はじめに 口腔内環境を改善するうえでは、プラークコントロールだけでなく、生活習慣なども大きく影響します。本稿は、プラークコントロールに苦慮しながら20年以上の長期間口腔内の健康を維持できた一症例です。初診時、患者さんの口腔内環境は劣悪でしたが、歯周基本治療によって改善され、SPTへと移行しました。しかし、長期間のSPT中に生じた患者さんの心境の変化や生活環境の変化は、時にプラークコントロールやモチベーション低下を招きました。長期症例ならではの患者さんの変化による口腔内への影響とその対応について報告します。初診時の所見 患者さんは、初診時53歳の女性です(表1)。主訴のとおり、う蝕など口腔内に違和感がありながらも長年放置されていました。というのも、これまでは治療を受けてもメインテナンスについて説明されなかったため、患者さん自身定期的に通院する必要性について理解されておらず、結果、当院に来院するまで歯科検診を受けてこなかったようです。 検査所見を次ページ図1~3に示します。全顎的に口腔衛生状態は不良で、PPD4mm以上の部位は51%、PCR100%、BOP 79%でした。ほぼ全歯に二次う蝕を認め、44に深い縁下う蝕を認めました。さらに、₂にはパー年齢、性別53歳(1996年1月初診時)、女性主訴全体的にむし歯を治したい、上は入れ歯にしたくない歯科的既往歴20年以上前に他院で全顎的補綴治療を受けたが、その後当院に来院するまで放置していた全身的既往歴高血圧症(投薬により140/90mmHg)、高脂血症職業自営業(小売業)喫煙歴なし表1 患者さんの基本情報20年以上の長期症例からみえるSPTにおける課題と対応カリエスリスクや生活習慣に配慮しプラークコントロール維持に取り組んだ症例 [キーワード] 長期症例、SPT、カリエスリスク、生活習慣、プラークコントロール83歯科衛生士 June 2020 vol.44

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