歯科衛生士2020年8月号
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 昨年開催された第62回秋季日本歯周病学会学術大会で、特別講演をされたイエテボリ大学のトマシ先生は、「歯周基本治療の80%はコミュニケーションである」とおっしゃっていました。これは言い換えれば、歯周基本治療の成否にかかわるのが、スケーリング・ルートプレーニングなどの技術的な処置はたった20%で、残り80%はコミュニケーション、すなわち歯科衛生士が行う歯科保健指導であるといえます。 歯周病はプラーク細菌を原因とした炎症性疾患であり、歯周治療を成功させ、良好な状態を維持するためには、患者さんによる歯肉縁上のプラークコントロールを確立することが不可欠です。来院される患者さんのプラークコントロールのレベルはさまざまで、初診時からデンタルフロスも使用してきれいに磨いてくる患者さんから、歯を磨いていない患者さんまでいらっしゃると思いますが、大部分の患者さんの歯肉縁上のプラークコントロールは不十分なことが多いでしょう。知識とテクニックだけでなく、心を動かすアプローチをするには1特集歯周治療のためのコミ 身に付ける!歯周基本治療の成功には、患者さん自身の行動変容が不可欠です。近年、日本でも耳にするようになった“Motivational Interviewing(MI)”は、患者さんの行動変容につなげるためのコミュニケーション技法として、世界中の医療現場等で用いられているテクニック。本稿では、歯周治療における(=Periodontal)MI、すなわちPeriodontal Motivational Interviewing(PMI)のポイントをまとめ、歯周基本治療における患者さんとのやりとりを通して実践的に紹介します! (編集部) このように、歯肉縁上プラークコントロールはもっとも大事な歯周治療ですが、その治療の主導権は患者さんにあることが特徴です。これまで歯を磨いていなかった患者さんには、磨くように行動を変えてもらう(行動変容)必要があります。しかし、ただ単に知識とテクニック主体の口腔衛生指導(OHI)をしても、行動変容をしてもらえないことをよく経験します。したがって、患者さんに行動変容をしてもらうには、知識とテクニックに関する指導に加え、情意領域へのアプローチが必要といえるでしょう。Periodontal やる気スイッチをONにするはじめに ─歯周基本治療の成否を左右するのは患者さんとのコミュニケーション─手技(SRPなど) 20%コミュニケーション(OHIなど) 80%26歯科衛生士 August 2020 vol.44

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