歯科衛生士2020年8月号
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 効果的な行動変容を起こすためのカウンセリング手法としてMotivational Interviewing (動機づけ面接、以下MI)が注目されています。世界の歯周治療のバイブルでもあるリンデ先生の歯周病の教科書『Clinical Periodontology and Implant Dentistry(第6版)』1)の「Initial Periodontal Therapy:歯周基本治療(Infection Control)」の章では、第1項目としてMIが取り上げられているほどです。MIを理解することは世界標準の歯周治療をクリアするためには必須だと言えるでしょう。 MIは臨床心理士であるミラー先生とロルニック先生によって開発されたカウンセリングアプローチ技法で、書籍として1991年に初版が出版されました。2012年には第3版2,3)が出版され(P.42参照)、MI自体も進化を続け、一般の方でも理解しやすくなっています。 MIは患者さんの行動変容を促す技法ですが、これを活用することで医療者側も楽になるのが特徴です。 患者さんのプラークコントロールのための指導はある意味ストレスのたまるものです。OHIを行って、その場では「わかりました」と言われても、次回また、同じように磨けていないことが多くあります。同じことの繰り返しになることがわかっていながらもワンパターン化した指導を行っているうちに、患者さんとの会話も乏しくなり、ますます医療者側のストレスが増してきます。 しかし、MIを活用することにより、そのストレスが減少します。MIは「指導」ではなく、患者さんとの「協働」です。患者さんのチェンジトーク(P.33~35で解説します)をいかに引き出すかというゲームのように考えることもでき、OHIが楽しくなってきます。 さあ、MIを活用して患者さんと楽しく会話しながら、歯周治療を成功に導きましょう。行動変容を起こすためのカウンセリング手法・MI医療者側のストレスも減らせる ュニケーション技法 を新田 浩Hiroshi NITTA東京医科歯科大学歯学部附属病院 歯科総合診療部教授・歯科医師土岡弘明Hiroaki TSUCHIOKA土岡歯科医院[千葉県]院長・歯科医師JIADSペリオコース講師佐藤未奈子Minako SATO土岡歯科医院[千葉県]歯科衛生士Illustration:キタハラケンタ Motivational Interviewing入門動機づけ面接〈第3版〉上・下巻(ウイリアム・R・ミラー、ステファン・ロルニック著)[事例提供]27歯科衛生士 August 2020 vol.44

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