歯科衛生士2020年8月号
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CASE4本欄では、臨床に取り組まれている歯科衛生士の方にご登場いただき、日頃から後進の育成にあたっているアドバイザー委員のアドバイスを受けながら症例報告をまとめていただきます。臨床を振り返り、さらなるステップアップにつなげていただく場、また症例をシェアすることでともに学び合える場としていただけることを期待しています。[アドバイザー委員(50音順、敬称略)]奥山洋実/小林明子/塩浦有紀/田村 恵/山口幸子誌上ケースプレゼンテーションCASE PRESENTER●40歳●2000年岡山歯科衛生士専門学院卒業●臨床経験年数:18年●所属学会・スタディーグループ:日本臨床歯周病学会、日本歯周病学会認定歯科衛生士、日本医療機器学会第2種滅菌技士、苺の会、TDSC、DH Pro.School●勤務先:歯科衛生士は担当制で歯周治療・小児の予防に力を入れており、地域密着型の歯科医院として患者の口腔内を通して健康に寄与している。はじめに 歯科恐怖症の患者さんにおいては、恐怖心から治療困難となり、治療の中断、拒否などで十分な治療を受け入れられない例は少なくありません。それにより、口腔内の健康が損なわれ、QOLが低下し大きな問題となっていることが報告されています。 本症例の患者さんは、過去の治療経験のなかで十分な説明がないまま治療を受け、痛みをともなったことにより歯科への不信感につながったことや、20年前に麻酔を受けた際、吐き気や動悸がして急に気分が悪くなったことから、歯科治療への恐怖心につながった結果、歯科受診が遅れ、歯周病の重症化・咬合崩壊へつながったと考えられました。不信感と恐怖心による治療中断が予測されたので、患者さんを知り、理解するために「医療面接」が重要だと考えました。今回、医療面接で得られた情報からていねいにアプローチを行ったことで、患者さんとの信頼関係を構築することができ、恐怖心があったにもかかわらず歯周治療を受け入れてもらい、SPTへ移行し継続的な来院につながったので報告します。初診時 患者さんは、初診時64歳の女性です(表1)。主訴は上の前歯の隙間が気になるということで、20年ぶりに歯科医院を受診されました。すぐに歯科受診がで医療面接や技術面・精神面の配慮による信頼関係の構築歯科恐怖症患者をSPTにつなげた症例[キーワード] 医療面接、信頼関係、歯科恐怖症、SPT表1 患者さんの基本情報谷口裕子Hiroko Taniguchi医療法人遠藤歯科クリニック[岡山県]歯科衛生士年齢、性別64歳(2009年10月初診時)、女性主訴上の前歯の隙間が気になる現病歴11が出てきたことと、昨年頃から歯の隙間が空いてきたため、歯を抜いて見た目をきれいにしてほしい歯科的既往歴歯科治療の経験は少ない。66は疼痛により35歳と44歳の時にそれぞれ抜歯。44歳で抜歯をした際、麻酔による体調不良と痛みをともなったことがあり、歯科治療が怖い全身的既往歴服薬を含めて特記事項なし。ただし初診の1ヵ月前に病院に受診した際、腎機能(クレアチニン)の数値が少し高めだった。身長:146cm、体重:36kg、BMI:16.9%(低体重の痩せ型)喫煙歴なし家族歴15年前に夫が他界してから一人暮らし。一人娘は嫁ぎ先で同居中職業専業主婦83歯科衛生士 August 2020 vol.44

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