歯科衛生士2020年10月号
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今日からはじめる 1特集はじめに 歯科衛生士として医療面接やブラッシング指導を行うときに、患者さんの口臭に気づいた経験はありませんか? また、人と会話したときにタバコのにおい、お酒を大量に飲んだ後の二日酔いのにおい、焼き肉を食べた後のニンニクのにおいなど、相手のにおいを不快に感じて嫌な気持ちになったことはありませんか? このように、診療室でも日常生活の中でも皆さんが口臭に気づく機会は多いと思います。 口臭の原因はいろいろありますが、これまでの研究結果から口臭の主な発生原因は、口腔疾患や口腔清掃の不良であることが判明しています。したがって、適切な歯科治療や歯科保健指導を行うことで、口臭を軽減させることができます。口臭治療は、筆者らが勤務しているような大学病院などにある口臭専門外来だけで行う特別な治療ではありません。口臭で悩む患者さんへの対応は、一般の歯科医院においても可能です。 本特集では、歯科衛生士に必要な口臭の治療や予防に関する最新情報について、解説いたします。口臭とは 口臭は、「呼吸や会話をしたときに口から出てくる息が、他人にとって不快に感じられるもの」と定義されています。重要なのは、本人ではなく第三者がにおいを不快に感じるか否かという点です。事実、当外来を受診する理由で、患者さんからもっとも多く挙がるのは「人から指摘された」ということです。 このにおいを感じる嗅覚には個人差があります。また、同じ人でも、そのときの体調や心理的要因によって、においの感受性が大きく変化します。たとえば、さわやかなオーデコロンの香りも、病気で体調がすぐれないときには不快に感じます。スポーツをした後の男性の汗のにおいも、好きな相手であれば好ましく思いますが、赤の他人では不快に感じます。人の嗅覚はいつも客観的ににおいを識別できるわけではなく、過去の経験やその時の心理状態の影響を受けてしまうのです。 また、嗅覚には同じにおいを長時間かいでいるとそのにおいに慣れてしまう「順応反応」があります。そのため、周囲の人が顔を背けるほど強い口臭の持ち主であっても、本人がにおいを自覚していないことがあります。 歯科衛生士は歯科の専門家です。診療室で患者さんと話したときに、相手の口臭に気づいたときは、適切に指摘してあげることも重要です。患者さんは「どうしたらよいのですか」と必ず聞いてきます。そこで、きちんと口臭の原因について説明し、適切な処置や歯科保健指導を行って、口臭が改善するよう支援してあげましょう。来院時に「あれ?」と気づいたら26歯科衛生士 October 2020 vol.44

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