歯科衛生士2020年10月号
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発達特性や感覚過敏がもたらす食べることの困難を知ろう1PART昨今テレビなどのメディアでも取り上げられることが多くなった「発達障害」。どのような特性があるかを知り、どのように食と関連するか考えてみましょう。髙橋 智、田部絢子 発達障害は、脳機能の発達の偏りによる障害とされ、対人関係・社会への適応やコミュニケーションの問題など社会生活の困難、集中力がないこと、落ち着きがないこと、読み書きや計算の困難などが知られています(図1)。また、こうした発達困難の他にも独特な身体感覚の問題を抱えている可能性が指摘されています。感覚の過敏・低反応、自律神経系や免疫・代謝の脆弱・不全にともなう各種の身体症状などであり、そうした特性と「食の困難」が大きく連関しているということです。 発達障害者支援法において「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています1)。 そのなかでも「自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害」を包括する自閉スペクトラム症(ASD)では偏食、食のこだわりがある、異食症の頻度が高いことが報告され2,3)、また摂食機能に根本的な問題がないにもかかわらず咀嚼困難を有する子どももいることが明らかになっています4,5)。 また、「注意を持続できない」「忘れ物が多い」「片づけが苦手」などの注意欠如と「歩き回る」「順番を待てない」「しゃべりすぎる」などの多動・衝動性の特徴を示す注意欠如・多動症(ADHD)では、食事場面でも「食べ物を口に入れたまましゃべる」「食事中に歩き回る・遊ぶ」「咀嚼・嚥下をタイミングよくできずにむせる」「ほとんど噛まずに丸のみする」「こぼす」などにより、「しつけができていない」「行儀が悪い」と親子ともに注意・指摘されることが多く、また保護者が子どもを叱責し続けていることも少なくありません。このように、発達障害の特性は、食の困難と深く関係しているのです。図1 発達障害の特性学習障害(LD)●基本的には全般的な知的発達には遅れはないが、聞く、話す、書く、計算する、または推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示すさまざまな状態を指す食事中のその行動、発達障害の特性かも?自閉症スペクトラム障害(自閉スペクトラム症:ASD)自閉症●言葉の発達の遅れ●コミュニケーションの障害●対人関係・社会性の障害●パターン化した行動、こだわり広汎性発達障害アスペルガー症候群●基本的に、言葉の発達の遅れはない●コミュニケーションの障害●対人関係・社会性の障害●パターン化した行動、興味・関心の偏り●不器用注意欠陥多動性障害(注意欠如・多動症:ADHD)●不注意(集中できない)●多動・多弁(じっとしていられない)●動的な行動(考えるよりも先に動く)48歯科衛生士 October 2020 vol.44

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