歯科衛生士2020年11月号
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授乳期・離乳期の支援から考える「子どもの意欲」まず、離乳支援に「子どもの意欲」という視点を加えるにあたって、前提として理解しておくべき背景をまとめました。山田 翔 たけのやま歯科・歯科医師 「食べる」ことは、実は授乳期から始まります。そこで、まずトピックとなるのが「母乳かミルクか」です。歯並びについては、母乳育児の期間と不正咬合の関係を調べたシステマティックレビューがあります1)。これによると、哺乳瓶のみで育った子よりも母乳で育った子のほうが、臼歯部の交叉咬合やアングルⅡ級の不正咬合が少なく、母乳育児の期間が長いほどその傾向が強まりました。口腔機能についても、直接母乳の場合のほうが離乳食において食べら 「食べる」ことの始まりである授乳に関して、私たち歯科医療従事者は知識を持っておく必要がありますので、ここで簡単に整理しておきましょう。 胎盤が娩出すると、プロゲステロンの分泌が低下し、プロラクチンの分泌が上昇します。このプロラクチンというれる食品の範囲が広がりやすい傾向が示された研究があります2)。いずれも複数の交絡因子が関係するため、質の高い根拠とは言えませんが、口腔機能の観点からも母乳育児にはメリットがありそうです。 ただし、ここで「母乳がいい」とか「ミルクがいい」というような対立する極端な立ち位置にならないように注意が必要です。母乳育児は本能だけでできるものではなく、学習によって習得される側面があります。母乳育児を行うならば、その利点について情報提供し、母乳育児支援を行うことができる専門職との連携をとらせる環境づくりが必要です。ミルクを使用する場合にも、各種哺乳瓶の特徴や、授乳姿勢、目を合わせて声かけをすることなどの情報提供を行い、支援していきます。 私たち医療従事者は、育児を行う人を「指導」するのではなく、その意思決定プロセスと実践を「支援」するものであるという認識が重要で、それはこのあとに続く離乳や、子育て全般に通じるものでもあるのです。ホルモンが母乳分泌の開始と維持に必須なのですが、分娩直後に最高になり、授乳をしないと産後2週間で正常非妊娠時のレベルに戻ってしまいます。そのため、分娩後できるだけ早くに直接授乳(できない場合は搾乳)を開始する必要があります。また、直接授乳をするときにはオキシト現在では子どもの意欲に応じた「自律授乳」が主流大切なのは「指導」ではなく「支援」の姿勢1TARP48歯科衛生士 November 2020 vol.44

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