歯科衛生士2021年1月号
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TCHを止めるにはP.62患者説明用シートTCHを続けるとなにが起きる可能性があるのかくいしばり、噛みしめとの関係P.59TCHの確認のしかたP.60口腔内の問題につながる癖があるP.58P.61説明のPOINT「顎関節症の患者さんの癖」として注目 TCHとはTooth Contacting Habitの略称で、上下の歯を接触させ続ける癖(上下歯列接触癖)のことです。何もしていない時には、ふつうは上下の歯は接触していません1)(図1)。口を閉じている時、上下唇が閉じている時に、どこかの上下の歯が触っているようであれば、それはTCHの可能性があります。 TCHは元々、顎関節症の患者さんが持っている癖として注目されました。筆者らが行った研究では、顎関節や周囲の咀嚼筋の痛みが4ヵ月以上続いている患者さんの52.4%がTCHを持っており、初診時にあった顎関節・咀嚼筋の痛みが軽減されない可能性は、TCHがない人の約2倍になるという結果でした1)。その後の調査では、同様の痛みを抱える患者さんのうちTCHを持っている人は8割近くに及び、さらに高い割合を示しました2)。そして、実際にこの癖の是正を行ったことで症状が改善する人もいることがわかりました。 もちろん、TCHが顎関節症の唯一の原因ではないので、それ以外の要因にも注意が必要です。また、顎関節症以外の歯科疾患についても、TCHが要因である場合もあります。TCHは「力の問題」のひとつ 口腔のトラブルの多くは口腔内の細菌感染によるものですが、歯ぎしりやくいしばりなどのブラキシズムもまた、トラブルを引き起こす可能性があります。このTCHもそういった力のひとつです。TCHは歯の接触なので、そこまで強い力ではありませんが、作用する時間が長いためさまざまな問題を起こす可能性があります。 TCHを是正することで「はっきりとした原因がないのに歯が痛い」「入れ歯の調整をしているけど何度やってもよくならない」「歯がしみるのが治らない」などといった症状が改善する場合がありますので、このような時はTCHとの関連を考えてみることも大切です。自覚症状がない 口腔内に及ぶ力の存在を感じた時に歯ぎしり、くいしばり、噛みしめなどが最初に思い浮かぶと思います。しかし、いざ患者さんに「くいしばりをしていますか?噛みしめていますか?」と聞いても「?」「やってないと思う」となるケースが多々あります。 TCHを念頭において、まずは「唇を閉じている時に、くいしばりではなく上の歯と下の歯がくっついている、触れていることはありませんか?」などと質問してみましょう。 そのようにして患者さんにTCHがあるとなれば、患者さんにどのように説明すればよいかを、次ページより解説していきます。TCHでかかる力は強くなくても、継続時間が長いため、口腔内のトラブルの原因となってしまう57歯科衛生士 January 2021 vol.45

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