歯科衛生士2021年1月号
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症例をシェアして、ステップアップ!Case39はじめに―歯周治療の中心はやはり細菌のコントロール― 歯周病は、非プラーク性歯肉疾患を除くと、口腔内の歯周病原細菌によって引き起こされる炎症性疾患で1)、歯周組織の破壊をともないます。その重症化を止められなければ、最後には抜歯を余儀なくされ、患者さんのQOLの低下を招きます。 また、歯周病は多因子疾患であること、患者単位、歯単位で異なる重症度と進行リスクを持つ疾患である2)ことが知られています。ですから、歯周病の進行・安定は、細菌の侵襲の強弱だけで決まるものではなく、細菌のほかに、宿主の免疫や、骨と結合組織の代謝、患者さんの先天的・後天的要因と環境因子なども影響する、複雑な疾患であることがわかっています3)(図1)。歯周病の発症に細菌の存在は必須ですが、それだけでは不十分で、細菌が要因として占める割合はおよそ20%しかないとも言われています4)。とはいえ、患者さんの免疫力を高める治療や、骨や結合組織の代謝を変える治療がない現状では、やはり細菌の総量を減少させて、細菌叢のバランスを改保存不可と見込まれた歯を含めて安定が得られた重度歯周炎症例[キーワード] 保存不可、重度歯周炎●36歳●2006年新大阪歯科衛生士専門学校卒業●臨床経験年数:15年目●勤務形態:常勤●勤務先:歯周治療を中心に、患者の口腔諸機能を生涯にわたり維持することを目指した診療を行っている。 福原あゆみさんAyumi Fukuhara石川齒科醫院[兵庫県]歯科衛生士日本歯周病学会認定歯科衛生士日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士 5-D Japan DHコースインストラクター今回症例を紹介してくれるのは……年齢、性別52歳(2016年1月初診時)、女性主訴左上の歯の隙間が大きくなってきている気がする現病歴10年近く前から動揺があり、その後隙間が空いてきている。3年前に同様の主訴で近医を受診したが、歯磨剤を勧められたのみだった歯科的既往歴困った時のみ受診。継続的に通院する習慣はない。最後の受診は3年前全身的既往歴喫煙歴を含めて、特記事項なし表1 患者さんの基本情報図1 歯周病の病因論歯周病は細菌の侵襲を主因とし、さまざまな因子の影響を受ける多因子疾患である。(文献1より引用改変)多形核白血球抗体抗原LPS他の病原因子サイトカイン、プロスタグランジンマトリックスメタロプロテアーゼ環境および後天的因子先天的因子細菌の侵襲宿主免疫・炎症反応結合組織・骨の代謝歯周病の成立と進行の臨床所見修飾因子主因結果修飾因子71歯科衛生士 January 2021 vol.45

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