歯科衛生士2021年2月号
4/9

13 歯周病が心臓病や糖尿病、さらにはアルツハイマー病などのさまざまな全身疾患に関連することが注目されているのはご存じかと思いますが、そのなかで妊婦の歯周病が早産・低体重児出産と関連することが明らかとなってきまし妊娠期に歯科受診が必要な つの Part1心身が大きく変化する妊娠期こそ歯科受診が重要となります。まずは、なんのためにどのようなアプローチが必要となるかおさえておきましょう。妊婦自身の口腔の健康のために妊娠中は口腔内のリスクが高まるから妊娠・出産のサポートのために早産や妊娠合併症のリスクと関連するからた3)。また、最近では妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの合併症にも関連することが報告4)されています。したがって、母子ともに健康な状態で出産を迎えていただくためにも妊婦に対しても適切なOHIが必要となります。 妊娠期は、つわりなどによる生活・食習慣の変化に加え、胎盤からの女性ホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤性ラクトゲン、エストロゲン、プロゲステロン)の影響(図1)によって、さまざまな口腔疾患(P.47、48参照)の発症リスクが高まる時期といえます1)。しかしながら、妊娠中は食事や運動、旅行などさまざまな制限や我慢をしなければならないことが多くあり、口腔内のトラブルに対しても、赤ちゃんに悪影響が及ぶことを心配して歯科受診を控えてしまうという妊婦が多いようです。 また、歯科医院側も妊婦というだけで歯科治療を躊躇し、適切な対応を先延ばしにしてしまい、出産後の再受診時には病変がかなり進行してしまったケースも多いのが現状のようです。このような悪循環を断ち切るためにも、適切な妊婦歯科診療が必要であり、私たちの介入が妊婦自身の歯科疾患予防にも大きなメリットとなります。図1 妊娠期における女性ホルモン濃度の変動胎盤は、タンパクホルモン(hCG、hPL)とステロイドホルモン(E、P)を産生する。妊娠初期には、妊娠によりできた胎盤がhCGを産生し、黄体を妊娠黄体へと変化させ、女性ホルモン(E、P)の産生を促進させる。40分娩2535203015妊娠週数(週)μg/mLIU/mL00520ng/mLμg/100mL010050200100010200(文献2より作成)105プロゲステロン(P)エストロゲン(E)ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)ヒト胎盤性ラクトゲン(hPL)hCGEhPLP42歯科衛生士 February 2021 vol.45

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る