歯科衛生士2021年2月号
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Illustration:サタケシュンスケ[第14回] 歯周病と糖尿病互いの治療の大切さを説明しましょう糖尿病はさまざまな合併症を発症する 糖尿病は慢性高血糖が持続する病気ですが、放置すると種々の合併症が起こってきます。このうち、網膜症、腎症(腎臓の病気)、神経症は三大合併症と呼ばれています。このほか、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、足壊死、最近ではがんや認知症も合併症ではないかと言われるようになりました(P.69参照)。歯周病も合併症の一つで、糖尿病があると歯周病の進行が促進され、またSPT期においても歯周病が再発しやすいとされています。糖尿病&糖尿病予備軍の患者さんは非常に多い 日々の診療においては、糖尿病の自覚がなくとも実際に糖尿病を患っておられる患者さんに出会うケースが多くなってきています。 平成30年の厚生労働省『国民健康・栄養調査』1)によると、20歳以上の成人で糖尿病が強く疑われる人の割合は男性で18.7%、女性で9.3%です。つまり、毎日診療室で出会う患者さんのうち、男性ではほぼ5人に1人、女性では10人に1人は糖尿病と自覚しておられるか、もしくは自己申告がなくとも潜在的に糖尿病を抱えておられる可能性がある計算になります。 ただし、糖尿病はとりわけ60歳以上の方に多いので、地域によっては頻度にばらつきが出てきます。しかし、これを調整しても(つまり比較的若者が多い地域においても)、男性で7人に1人、女性で15人に1人はその疑いがあります*1。栄養状態と糖尿病の関係 年代別に見てみると、男性では40歳を超えるころから糖尿病が増え始めます。一方、女性ではどの年代でも男性より少なくなっています(図1)。 ところで、「糖尿病は太った方がかかりやすい」ということをお聞きになられたことがあるでしょうか。本調査では、肥満およびやせについても調査していますが、これによると肥満は女性よりも男性で多くなっています(図2)*2。糖尿糖尿病はいまや、歯周病のリスク因子として歯周疾患の新分類にも反映されるほど、その影響はたしかであることがわかってきました。歯周治療中の患者さんに、糖尿病が歯周治療にも影響を及ぼすことをお知らせするとともに、糖尿病が疑われる患者さん・糖尿病の患者さんには、血糖コントロールのうえでも歯周治療が大切である可能性もあることを伝え、モチベーションにつなげましょう。歯周病を合併症の一つとする糖尿病は、男性では5人に1人が疑われるほど頻発し、栄養状態に左右される疾患西村英紀Fusanori Nishimura九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯周病学分野教授・歯科医師66歯科衛生士 February 2021 vol.45

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