歯科衛生士2021年3月号
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 2020年を通して全世界を席巻した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と名付けられ、日本では昨年2月にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で感染者が確認されると連日報道がなされ、不安と感染者数は増していった(第1波)。 新しいウイルスの詳細が掴み切れないなか、3月2日からは全国の小中高が急遽臨時休校とされ、4月には緊急事態宣言が全国に発出された。前後して、厚生労働省が歯科に緊急性のない治療の延期等を考慮するよう通達したことを受け(4月6日事務連絡)、情報が不足するなか多くは対応に苦心しながら診療を続けたが、休診や時短診療に踏み切る歯科診療所もあった(図1a)。 歯科におけるクラスター(集団感染)は確認されていなかったものの、3月15日のニューヨークタイムズの記事*で、歯科衛生士をはじめとする歯科医療者が全職種中感染機会のもっとも多い職業に挙げられたことをきっかけに、歯科に対する社会の、そして歯科衛生士の感染不安は急速に高まったように思われる。ほとんどの歯科診療所で外来患者数は減り、アポイントのキャンセルや延期も目立つようになった(図1b)。 5月25日に全国すべての緊急事態宣言が解除され、小さな第2波を経てしばらく感染状況は落ち着いていたが、11月頃より再び感染者が増加していき、年が明ける頃には1日の感染者数は7,000人を超えるまでに急増(第3波)。2021年1月には都市部を中心に再び緊急事態宣言が出され、さらに変異株(VOC-202012/01)も確認されるなど、現在まで収束の見えない状況が続いている。 本誌では、未来への記録として、この未知のウイルスに対し手探りで果敢に対応した5つの歯科医院と、加えて急性期病院に、第1波当時の状況を中心にレポートを依頼した。また、職能団体として、愛知県歯科衛生士会にもレポートをいただいた。 いまだ状況が刻々と変化するなかではあるが、昨年8月に深井保健科学研究所として「COVID-19と口腔保健・歯科医療のニュー・ノーマル」を提言された深井穫博先生の総論とともにお届けする。(編集部)* Lazaro Gamio. The Workers who face the greatest coronavirus risk. (In)The New York Times 2020年3月15日. https://www.nytimes.com/interactive/2020/03/15/business/economy/coronavirus-worker-risk.html(2021年1月12日アクセス) ※本稿におけるNYタイムズの記事とはすべて上記記事を指す。(日歯News Letter 第13号(日本歯科医師会、令和2年6月25日発行)https://www.jda.or.jp/dentist/coronavirus/upd/file/nisshi_news_letter200625.pdfより作成)図1 第1波の緊急事態宣言における歯科医療機関の変化日本歯科医師会が5月に行った「新型コロナウイルス感染症対応下での歯科医業経営状況等アンケート調査報告書」に基づく。本調査の対象は各都道府県歯科医師会役員および委員会委員(各都道府県10~20名程度)で、有効回答数は406件。本稿で紹介する5つの医院は休診や時短などの措置を講じた歯科医院が多いが、けっして多数派ではないことがわかる。5割以上が増えたと回答。また、外来患者数の動向については、昨年同期と比較して「大幅に減った」「やや減った」を合わせて9割以上になった。図1a 診療体制の変化図1b 予約診療のキャンセルや予約日の調整 (昨年同期との比較)通常通り74.6%無回答1.5%時短診療 19.7%休診 4.2%大幅に増えた23.9%やや増えた30.8%その他(変わらない・やや減った・大幅に減った・無回答)45.3%コロナ禍――その時、歯科はみんなどうしてた? これからどうする?1特集COVID-19対応の記録※本稿中、特に記載のない時期はすべて2020年。25歯科衛生士 March 2021 vol.45

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