歯科衛生士2021年3月号
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歯肉からの出血の有無によって病原性は変わるP.75免疫力が低い人は高い人よりも歯周病が進行しやすいP.76バイオフィルムにはいろいろな種類の細菌がいるP.74生活習慣によっても免疫は弱まるP.77やっぱり大事なのはセルフケアP.78 歯周病はバイオフィルム細菌による感染症です。バイオフィルムの攻撃力と歯周組織の抵抗性のバランスが均衡している時には何も起こりません。バイオフィルムの病原性が高くなると、あるいは歯周組織が弱くなれば、均衡バランスが崩れて歯周病が発症します(図1)。 均衡バランスを決めるのは、バイオフィルムの病原性(定着した歯周病菌の種類と菌量)と歯周組織の抵抗性(遺伝と生活習慣)です。口腔清掃が不良な場合でも、歯周組織の抵抗性が強く歯周病が発症しない場合があれば、口腔清掃が良好でも、歯周組織の抵抗性が弱く歯周炎を起こすこともあるなど人によりさまざまです(図2)。均衡バランスを崩す要因はいくつもあり(図3)、これらの要因が多いほど歯周病になりやすいのです。 これらのうち、歯周病菌の種類と患者さんの遺伝は変えられません。しかし、菌量と生活習慣は変えられます。それらの要因を改善すれば、歯周病になりやすい人でも発症を予防できます。患者さんにご自身の歯周病リスク、すなわち均衡バランスを崩壊させる要因を理解してもらうためにどのように説明すればよいか、みていきましょう。歯周病のかかりやすさが患者さんによって違うのはなぜ?遺伝、加齢、悪玉細菌種は変えられないが、ブラッシング、口呼吸、生活習慣は変えられる。変えられることを変えよう。(症例提供:貴島佐和子DH[大阪府勤務])45歳女性。口腔清掃状態不良。バイオフィルムに悪玉菌がいない、あるいは歯周組織の免疫力が高いと考えられる。26歳女性。口腔清掃状態良好。バイオフィルムに極悪玉菌がいるのか、歯周組織の免疫力が低いと考えられる。出血によりバイオフィルムの病原性はさらに高くなる。28歳女性。口呼吸癖あり。口唇が閉じていないため上顎前歯がつねに外気に触れ、バイオフィルムは乾燥し硬くなる。ていねいにブラッシングしているが、容易には除去できていない。歯周組織の抵抗性を下げる要因バイオフィルムの病原性を上げる要因●生まれつき弱い免疫力●加齢●唾液量の低下●口呼吸●生活習慣(喫煙、ストレス、不健 康な生活習慣、生活習慣病)●悪玉歯周病細菌●磨き残した古い バイオフィルム●歯肉からの出血●タバコの化学物質●口呼吸図3 均衡バランスを崩す要因図2 さまざまな均衡バランスの症例均衡バランス維持:健康歯肉均衡バランス崩壊:炎症歯肉 (歯周炎)均衡バランス崩壊:炎症歯肉 (歯肉炎)説明のPOINT目的にあわせたセルフケアグッズの選択についてで伝えましょう。患者説明用シート73歯科衛生士 March 2021 vol.45

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