歯科衛生士2021年3月号
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2011年3月11日に発生し、東北地方はもちろん、日本全国に甚大な影響をもたらした東日本大震災から10年の月日が経ちました。今回、震災直後から被災地に入り、現在に至るまで現地で地域医療に従事されている著者に、その活動を振り返っていただきました。著者らが日々直面している状況はけっして被災地に限ったものではなく、超高齢社会を迎えた日本の多くの地域で今後さらに増えていくものと考えられます。(編集部) 現在、筆者は東日本大震災で壊滅的な被害を受けた、宮城県の石巻市雄勝歯科診療所で歯科医をしております。震災当時は、長野県の松本歯科大学病院特殊診療科(障がい児・者、有病者、高齢者、摂食嚥下障害を有する患者に対し専門的に歯科的対応を行う診療科)に在籍しておりましたが、震災発生後、日本歯科医師会、日本歯科医学会、厚生労働省からの大学への歯科支援要請を受け、2011年4月に松本歯科大学災害歯科支援隊を結成し、隊長として宮城県気仙沼市、南三陸町に入り、被災者の歯科支援活動に従事しました。 歯科支援活動をしているなかで、石巻市雄勝町が無歯科医地区になり困っているとの情報を得ました。そこで、引き続き被災地域歯科医療再生と地域のお役に立ちたいという思いから、2012年3月に大学を退職し家族で宮城県に移住しました。翌月からは石巻の行政歯科医師となり、その2ヵ月後にプレハブで開所した石巻市雄勝歯科診療所の歯科診療所長となりました。2017年1月には医科と歯科が同じ建物に入った本設の診療所が開所され、現在に至ります。 本稿では、災害現場の実情と、現在筆者が取り組んでいる活動等について、地域医療に携わる立場から紹介させていただきたいと思います。震災を機に、大学病院を離れ、被災地での地域医療へ東日本大震災から10年─被災地から見える地域・災害医療の未来─仙台宮城県雄お勝がつ町ちょう石巻市雄勝歯科診療所2012年6月(仮設診療所)2017年12月(本設診療所)特別企画河瀬聡一朗Souichiroh KAWASE石巻市雄勝歯科診療所[宮城県]所長・歯科医師87歯科衛生士 March 2021 vol.45

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