歯科衛生士2021年4月号
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ベテランDHから学ぶ根分岐部のSRP2特集Illustration:コージー・トマト、飛田 敏 2021年春、患者さんを前にして、「歯周病を治すSRPがしたい!」と意気込んでいませんか? 筆者は今年31年目をむかえる歯科衛生士ですが、重度の歯周炎にかかわる機会も多く、歯周基本治療について悩む日々を過ごしています。 歯周治療の目的はいろいろ挙げられますが、そのうちの一つは歯周炎の進行を止めて歯の喪失を防ぐことです。しかし、根分岐部病変がある歯はその他の歯よりも失われるはじめに ―最難関のひとつ、根分岐部のSRPに挑戦!―長期安定を目指して図1 初診時(1996年)の所見6にはII度の根分岐部病変があり、頬側に5~7mmの歯周ポケットが残存していた。図2 初診から3年後(1999年)の所見根分岐部の入口は乳頭に似た歯肉で覆われ、プローブが入らなくなり、歯槽骨も明瞭化した。(図1、2は文献5より転載)傾向が高いと考えられています1)。治療の基本は炎症のコントロールですが、根分岐部病変は最善を尽くしてもうまく治らない場合があります。このあとご紹介するように、根分岐部はその複雑な解剖学的形態からプラークコントロールとSRPがしにくい、進行した根分岐部病変を非外科的治療で改善するのは難しいというのが一般論です2)。 「根分岐部病変が認められる歯は失う危険性が高い!」「根分岐部の中まできちんと清掃することは難しい!」……でも、 歯科衛生士からみてもとりわけ手強い根分岐部病変は、進行具合に応じて、SRP、トンネル形成術、歯根の切除や歯根分割、再生療法などの治療が選択されます3)。根面う蝕や分割して小さくなった歯根の破折、時にはセルフケアの難しさを心配しながら、SRPを主体にした歯周基本治療を行うことで、根分岐部病変を改善できないか……。 そう考えるようになったきっかけは、25年前にさかのぼります。筆者は1996年の春、歯周基本治療では6の根分岐部病変に変化がみられない患者さんの担当になりました。前担当者から引き継いだ時点で単根歯の歯周炎はある程度治っていたのですが、6にはLindheの分類でII度(P.54図4参照)4)の根分岐部病変があり(図1)、頬側に5~7mmの歯周ポケット(以下、ポケット)が残存していました。この時の筆者は臨床経験6年目に差し掛かっていて、「同じ口腔内で臼歯が治らないのは筆者が根分岐部病変と向き合うようになったきっかけabab50歯科衛生士 April 2021 vol.45

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