歯科衛生士2021年4月号
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CASE7本欄では、臨床に取り組まれている歯科衛生士の方にご登場いただき、日頃から後進の育成にあたっているアドバイザー委員のアドバイスを受けながら症例報告をまとめていただきます。臨床を振り返り、さらなるステップアップにつなげていただく場、また症例をシェアすることでともに学び合える場としていただけることを期待しています。[アドバイザー委員(50音順、敬称略)]奥山洋実/小林明子/塩浦有紀/田村 恵/山口幸子誌上ケースプレゼンテーションCASE PRESENTER●37歳●2003年岡山高等歯科衛生専門学院卒業●臨床経験年数:17年●所属学会・スタディーグループ:日本歯周病学会(2016年認定歯科衛生士資格取得)、PASSION、苺の会●勤務先:1995年に「私たちに関わるすべての人に幸せな生涯を送っていただくお手伝いをする」という理念のもと、わたなべ歯科クリニックが開業され、以来26年間、予防歯科を中心に診療を行っている。当院は分院として2008年に開業した。はじめに 歯周病は、歯周病原細菌によって引き起こされ、口腔内の環境因子および全身状態が複雑にかかわる感染性炎症性疾患です1)。そのため、歯周病の病態は個々の患者さんによってさまざまなので、ごく一般的な歯周治療を行っただけでは歯周状態が安定しないこともあります。また、歯周病は全身疾患と双方向に関係することが多くの研究で明らかにされてきており、歯周治療の診断や治療において患者さんの全身状態を把握することは重要です。 本症例において、肥満や糖尿病、そして生活習慣などの環境因子が、歯周病の状態や歯周治療後の経過に影響している可能性を実際に経験し、歯周病と全身状態と口腔の深いつながりを感じました。そのことから、歯科衛生士は歯周治療において、単に口腔内だけを診て歯周病の治療を行うのではなく、患者さんの生活習慣や全身の健康を考えて医療に携わることが重要であるとあらためて感じたので、報告します。口腔だけでなく、生活習慣の改善も含めて全身の健康観を高める歯周病と全身状態の深いつながりを感じた症例[キーワード] 口腔、全身、生活習慣、健康観、歯周病丸山恵理Eri Maruyama医療法人ゆたかイエスデンタルクリニック[岡山県]歯科衛生士表1 患者さんの基本情報年齢、性別55歳(2015年9月初診時)、女性主訴前歯の詰め物がはずれて気になる現病歴5日前に2のコンポジットレジン充填が脱離した。自覚症状はないが、見かけが気になり、加療を希望して来院した歯科的既往歴1年ぶりの受診であった。日々の忙しさから時間に余裕がなく、これまで痛みが出たり、困ったりしたときにだけ受診しており、定期的なメインテナンスには通っていなかった全身的既往歴患者からの自己申告では全身疾患もなく、健康状態は良好。服用薬剤もなし全身状態体型は肥満型(身長:156cm、体重:71kg、BMI:27.5)職業塗装業(会社役員)初診時の医療面接によって得られた当患者の主訴、現病歴、既往歴、全身状態等の情報を示す。患者は歯周病に起因する自覚症状を主訴に受診したわけではなく、全身状態も問題ないとのことであった。91歯科衛生士 April 2021 vol.45

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