歯科衛生士2021年5月号
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糖尿病は歯周病と切っても切れない関係にあるだけでなく、日常生活に及ぼす影響も多岐に渡ります。そのため、患者さんの治療や生活について理解することは歯科衛生士にとっても不可欠です。そこで今回は、一昔前と比べて大きく変わっているトピックを中心に、糖尿病患者さんの “今”について、糖尿病を専門とする著者にご紹介いただきます。また、歯科医院などで実際に患者さんを診る歯科衛生士がどのように糖尿病の知識を生かせばよいのか、糖尿病療養指導士の資格をお持ちである石原美樹さんにコメントをいただきます。(編集部)治療と生活のいま図2 「糖尿病が強く疑われる者」における治療の現況図1の「糖尿病が強く疑われる者」において、現在治療を受けている者の割合は約7~8割。40歳代男性では、他の年代よりも割合が低くなっている。(文献1より引用改変)治療あり治療なし(%)10080604020078.921.151.548.582.717.379.220.879.620.4男性女性70歳以上60〜69歳50〜59歳40〜49歳総数74.225.871.728.366.533.573.626.476.123.970歳以上60〜69歳50〜59歳40〜49歳総数 糖尿病がある方の多くは、健康診断で血糖値の異常を指摘されたり、他の病気で医療機関を受診した際に高血糖を指摘されるなどして糖尿病と診断されたりするほか、糖尿病の症状(喉の渇き、多尿、体重減少など)を感じて医療機関を受診し発覚することもあります。糖尿病と診断された方は、このあとPart1(P.30~35)でもご紹介するように、合併症の予防のために食事療法や運動療法を行い、医療機関の受診を継続することが望ましいとされています。 しかし、検査を受けないまま糖尿病であることに気づいていない方や、診断されたのち治療を開始したにもかかわらず途中で治療を中断する方もいます。図2で示すように、40歳代男性では治療を受けている割合が他の年代よりも低いことから、勤労世代の健診の受診率や治療の継続率を高めることが糖尿病診療の課題といえるでしょう。 こうした状況を少しでも改善するために、糖尿病の患者さんに接する医療者がまず知っておきたいことは、①糖尿病という疾患の基本知識、②糖尿病患者さんとのかかわり方の基本知識や心構え、の2つであると考えます。 糖尿病の診断・治療を受けていない人もいるかも!? 糖尿病は眼や腎臓、心臓や脳血管など関連があるといわれていた合併症のほか、最近ではがんや歯周病など糖尿病以外のさまざまな病気ともかかわりがあるといわれています。なかでも、糖尿病性腎症は特に医療費のかかる人工透析の原因になることから、重症化予防が大きな課題と考えられています。 国は糖尿病を重要疾患のひとつとして位置づけています。健康増進法や医療法などさまざまな法律で糖尿病を重点項目の一つと捉え、国を挙げて対策が取られています。合併症などの多さから、国を挙げての課題となっている27歯科衛生士 May 2021 vol.45

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