歯科衛生士 2022年1月号
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● 世界的にこれまでもっとも広く使用され、多くの人にとって、● 歯が萌出してから生涯を通して、歯をもつあらゆる年齢の人が● 毎日使用することで再石灰化の促進に役立つ● 世界での使用実績は60年以上に達する● ブラッシング習慣が広く普及している今日、フッ化物配合歯磨●第1回 フッ化物配合歯磨剤●第2回 フッ化物洗口●第3回 フッ化物歯面塗布石塚洋一Yoichi Ishizuka歯科医師博士(歯学)東京歯科大学衛生学講座 講師もっとも身近なフッ化物応用法利用すべきセルフケア用品剤が歯へのフッ化物供給のもっとも主要な手段 皆さんはフッ化物応用の歴史をご存じでしょうか? 1800年代から、日本をはじめ世界の各地(とくに火山地帯)で斑状の歯の異常が報告され、1936年には、Deanらが地域的に多発する斑状歯(歯のフッ素症)の原因が、飲料水中に過剰に含まれるフッ化物であることを解明しました1)。 その後、広範な疫学調査が行われ、飲料水のフッ化物の濃度がある範囲であれば、歯のフッ素症の発現をおさえ、う蝕が少なくなることが判明しました2)。そのため、フッ化物歯面塗布とフッ化物洗口によりフッ化物を局所的に歯に作用させたり、水道水フロリデーションが行われたり、フッ化物を利用したう蝕予防の試験が開始されました。各試験の安全性と有効性が確認されると、1964年にFDI(国際歯科連盟)が、う蝕予防としてフッ化物を推奨し、1969年にWHO(世界保健機関)が加盟各国に対してフッ化物応用の推進を勧告しました。これらに従った先進国でIllustration:岸 潤一January 2022 vol.46フッ化物応用は、半世紀以上にわたる研究に支えられ、う蝕予防としての効果が明確に確立されている手段です。本連載では、日本での各フッ化物局所応用について、文献をもとに時系列で追いながら一緒に実態をつかんでいきましょう。63連第1回の載日本は、う蝕予防後進国?!前には、フッ化物応用の普及とともに、子どもたちを中心にう蝕が急激に減少しました。しかしながら、歯みがきが最高のう蝕予防手段であると過信していた背景があった日本ではフッ化物配合歯磨剤の市場占有率(シェア)が10%台にとどまり3)、1985年にはFDI/WHOの共同作業班から、「日本は砂糖消費量が少ないにもかかわらず、フッ化物応用が希薄であるために、う蝕が多い国」と指摘を受けてしまいました。このようにフッ化物応用で、日本は先進国にくらべ大きく遅れをとってしまったのです。 しかし、その後、2010年には日本のフッ化物配合歯磨剤のシェアが90%になり3)、集団フッ化物洗口やフッ化物歯面塗布の普及も進んでいます。現在、日本では「フッ化物配合歯磨剤」「フッ化物洗口」「フッ化物歯面塗布」が利用可能です。今月から1つずつ掘り下げていきたいと思います。フッ化物応用の歴史をおさらい 文献でひも解くヒストリーフッ化物配合歯磨剤

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