歯科衛生士 2022年1月号
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総数総数00の を知る1特集なぜ?(文献1より引用改変)歯科衛生士 May 2021 vol.452021/04/10 9:21 糖尿病は眼や腎臓、心臓や脳血管など関連があるといわれていた合併症のほか、最近ではがんや歯周病など糖尿病以外のさまざまな病気ともかかわりがあるといわれています。なかでも、糖尿病性腎症は特に医療費のかかる人工透析の原因になることから、重症化予防が大きな課題と考えられています。 国は糖尿病を重要疾患のひとつとして位置づけています。健康増進法や医療法などさまざまな法律で糖尿病を重点項目の一つと捉え、国を挙げて対策が取られています。図2 「糖尿病が強く疑われる者」における治療の現況図1の「糖尿病が強く疑われる者」において、現在治療を受けている者の割合は約7~8割。40歳代男性では、他の年代よりも割合が低くなっている。治療なし治療あり(%)10021.117.320.820.425.828.333.526.423.980604082.779.248.578.979.674.271.766.573.676.150〜59歳40〜49歳60〜69歳2051.570歳以上40〜49歳50〜59歳60〜69歳70歳以上27男性女性P026-038_DH05_toku1.indd 26合併症などの多さから、国を挙げての課題となっている糖尿病の診断・治療を受けていない人もいるかも!? 糖尿病がある方の多くは、健康診断で血糖値の異常を指摘されたり、他の病気で医療機関を受診した際に高血糖を指摘されるなどして糖尿病と診断されたりするほか、糖尿病の症状(喉の渇き、多尿、体重減少など)を感じて医療機関を受診し発覚することもあります。糖尿病と診断された方は、このあとPart1(P.30~35)でもご紹介するように、合併症の予防のために食事療法や運動療法を行い、医療機関の受診を継続することが望ましいとされています。 しかし、検査を受けないまま糖尿病であることに気づいていない方や、診断されたのち治療を開始したにもかかわらず途中で治療を中断する方もいます。図2で示すように、40歳代男性では治療を受けている割合が他の年代よりも低いことから、勤労世代の健診の受診率や治療の継続率を高めることが糖尿病診療の課題といえるでしょう。 こうした状況を少しでも改善するために、糖尿病の患者さんに接する医療者がまず知っておきたいことは、①糖尿病という疾患の基本知識、②糖尿病患者さんとのかかわり方の基本知識や心構え、の2つであると考えます。 糖尿病は歯周病と切っても切れない関係にあるだけでなく、日常生活に及ぼす影響も多岐に渡ります。そのため、患者さんの治療や生活について理解することは歯科衛生士にとっても不可欠です。そこで今回は、一昔前と比べて大きく変わっているトピックを中心に、糖尿病患者さんの “今”について、糖尿病を専門とする著者にご紹介いただきます。また、歯科医院などで実際に患者さんを診る歯科衛生士がどのように糖尿病の知識を生かせばよいのか、糖尿病療養指導士の資格をお持ちである石原美樹さんにコメントをいただきます。(編集部)男性女性26歯科衛生士 May 2021 vol.45糖尿病の患者さんは、年々増えている 糖尿病有病者と糖尿病予備群は合わせて約2,000万人いるといわれています。日本の人口は約1億2,000万人ですので、いかに人口に占める割合が高いかがわかるかと思います。年齢が高いほど糖尿病有病者の割合は高くなり、有病者の割合は最近20年間で増加傾向にあります(図1)。土川睦子Nobuko TSUCHIKAWADM-NURSE-LAB代表看護学修士糖尿病看護認定看護師福田美紀Miki FUKUDADM-NURSE-LAB事務担当看護師・保健師・人間ドックアドバイザーメンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種[コメント]石原美樹 Miki ISHIHARA株式会社COCO DentMedical代表歯科衛生士・愛知県糖尿病療養指導士石原美樹 歯科衛生士・愛知県糖尿病療養指導士 歯周病と糖尿病は関連性が強いことがわかっており、歯科衛生士として糖尿病患者さんの状態を理解できるよう知識を持つ必要があります。まずは、血糖値・HbA1cを知ることで、患者さんの現在のお体の状態を理解してほしいです。糖尿病の状態によって歯周組織の治癒への影響が大きいため、糖尿病を知ることでその理由なども理解でき、患者さんへの説明や治癒の見方などにも変化がでてくると思います。 また、歯周病やう蝕と同じように、糖尿病においても行動変容が必要ですが、実際には本当に難しいことです。患者さんの現在の生活環境や精神面なども理解できるようになることで、歯周治療を行う際にも配慮しながら進められるようになると思います。読者の皆さんには、ぜひ今回の特集を熟読してほしいです。図1 糖尿病有病者・糖尿病予備軍の割合の年次推移HbA1cが6.5%以上、または糖尿病治療経験があると回答した者を「糖尿病が強く疑われる者」、HbA1cが6.0%以上6.5%未満で、「糖尿病が強く疑われる者」以外の者を「糖尿病の可能性を否定できない者」として、20歳以上を対象に調査。(%)50糖尿病の可能性を否定できない者糖尿病が強く疑われる者4030201014.012.112.215.315.216.310.012.88.09.915.913.112.111.09.37.96.57.38.77.11997200220072012201619972002200720122016(年)(文献1より引用改変)Illustration:石山綾子2021/04/10 9:21P026-038_DH05_toku1.indd 27治療・生活については2021年5月号を参照!糖尿病の73January 2022 vol.46歯科衛生士が知っておきたい歯科衛生士が知っておきたいコンさん55歳男性身長170cm/体重80kgBMI 27.7kg/m25年前から血糖値が高いことを会社健診で指摘されていたが放置。先月ようやく近医のクリニックを受診。糖尿病の診断を受けたばかり。●職業:会社員(営業職)●喫煙歴:35年、1日に20本たばこを吸う。●食生活:朝出勤時間のギリギリまで寝ているため、朝食は摂らない。昼昼食は、社用車を運転しながら食べられるコンビニの菓子パン2個と缶コーヒーで済ませる。夜夕食は子どもの好みに合わせて揚げものが多く、ご飯は山盛り1杯を食べる。その後ビールを飲みながら、おつまみを食べスポーツ番組を観るのが楽しみ。深夜1時ごろに就寝する。休日は昼前まで寝ていることが多い。ミキさんコンさんの歯周治療を担当しているとても元気な歯科衛生士。糖尿病について勉強中。ノブさん糖尿病看護認定看護師。ミキさんとは同じジムに通う友人。糖尿病は、歯周病と同様に“完治のない”疾患だから「なぜその行動変容が求められるのか」を理解していないと継続は難しい 糖尿病は、いったん診断を受けると治る病気ではなく、「コントロールしていく病気」と言われています。血糖値が高くなると、全身の血管や神経にダメージを与え、さまざまな合併症につながります。血糖値はもちろん、血圧、脂質の良好なコントロール状態を保つため、毎日行う食事・運動療法は非常に重要です。 本稿では、血糖値を下げるために「何をどれだけ食べるか」だけでなく、「どのように」「いつ」食べるのがいいのか、また他の血糖値に与える原因について解説していきます。取り入れやすい方法を具体的に提示しよう 食事療法や運動療法には「頭でわかっていても取り組めない、継続できない」といった難しさがあります。患者さんも食事療法に対して「好きなものを食べることを制限されるのではないか」というネガティブな気持ちを持っていることが多いです。 そのため、制限や禁止を強調した言い方は避け、患者さんがご自身の生活のなかに取り入れやすくなるように、できる限り具体的な食事内容や間食の仕方をイメージしやすく伝えるようにします。登場人物紹介糖尿病患者さんの 治療と生活のいま糖尿病患者さんの 治療と生活のいま

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