歯科衛生士 2022年1月号
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●44歳●2006年昭和医療技術専門学校卒業●臨床経験年数:13年●勤務形態:常勤●日本臨床歯周病学会の所属支部:関東支部●その他所属学会、スタディグループ:日本歯周病学会、日本口腔インプラント学会●勤務先:日本臨床歯周病学会認定医が在籍。歯科医師4名、歯科衛生士7名(うち2名が日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士)、受付・秘書2名によるチームアプローチにて日々臨床を行っています。表1 患者の基本情報 はじめにできるだけ歯を保存してほしい! Ai Osawa藤沢歯科[神奈川県]歯科衛生士日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士[キーワード] 歯周治療、情報共有、治療計画 歯周病が進行した患者さんの治療において、長期にわたって口腔内環境を良好に維持していくには、歯科医師と歯科衛生士によるチーム医療が鍵となります。歯周基本治療を進めながら、歯周外科治療や欠損部の補綴治療が必要となる部位の検討などが行われ、治療計画が立案されます。 今回、広汎型慢性歯周炎ステージⅣグレードB1の患者さんに対して、チーム医療を駆使して取り組んだ症例を報告いたします。筆者は、歯科医師の診断と治療計画、そして患者さんの「できる限り歯を保存したい」という想いをくみ取りながら、歯科衛生士の立場でかかわりました。 具体的には、①患者さんの口腔内の現状と②モチベーションや治療に対する理解度、③歯周基本治療の反応の3点を歯科医師と共有し、治療計画の立案・修正にかかわっていきました。 治療中には、歯周ポケットの治癒に時間がかかり、歯の保存の是非に苦慮しました。しかし、臼歯部の咬合が得られたことで小臼歯部の動揺がおさまり、抜歯が検討されていた歯を保存することができました。 患者さんは、初診時58歳の女性(表1)。4年前に歯周病が原因で7667を抜歯。初診時の歯周組織精密検査では、上顎前歯部に6mm以上のプロービングデプス(以下、PPD)がみられ、動揺度は3度でした。また、病的な歯の移動により歯列は唇側に偏位し、審美障害も認めました(図1、2、次ページ図3)。82年齢、性別奥歯が悪くなり、上の前歯が出っ張ってきた。歯の揺れが大きくなり、心配して受診。歯周病の治療と前歯をきれいにすることを希望。主訴4年前より、一般歯科に通院。数年前より歯周病により臼歯部を喪失。現在も残存する臼歯部の歯の動揺を認め、咀嚼障害あり。約1年前より上顎前歯部の前突がひどくなったように感じていた。歯の動揺が大きくなり、歯周治療を希望され来院。歯科的既往歴全身的既往歴家族歴初診時の主訴、既往歴、全身状態などの情報を示す。58歳(2015年9月初診時)、女性変形性股関節症(2021年現在は右側:疼痛-、内服-)両親ともに歯周炎で歯を失い、母親は総義歯装着、父親は部分床義歯装着歯周ポケットが減少せず、歯の保存の是非に苦慮した症例Case PresenterCase 1大澤 愛情報共有が成功の鍵となり、チーム医療の重要性を再確認

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