歯科衛生士 2022年5月号_2
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000 フッ化物濃度歯間部唾液フッ化物濃度(ppm)×時間(0〜60分)7月号1特集効果を左右する「使い方」 に注目。効果を左右する「使い方」 に注目。フッ化物配合歯磨剤 アップデートフッ化物配合歯磨剤 アップデート1プラークなどの除去を目的に清掃剤(研磨剤)が配合されたペーストタイプの歯磨剤(フッ化物配合が望ましい)を用いてみがく(歯磨剤を用いなくてもよい)2ブラッシング後、1回だけすすぐ(しっかりすすいでもよい)3フッ化物を口腔内に届けることを目的に、配合されているフッ化物が口腔内に広がりやすいフォームまたはジェルタイプのフッ化物配合歯磨剤を用いてみがく(ペーストタイプでもよい)4すすがず、唾液と一緒に口の中にたまったものを吐き出すのみにとどめる ご存じのとおり、2017年3月に、フッ化物イオン濃度(フッ素濃度)の上限を1,500ppmとする高濃度フッ化物配合歯磨剤の医薬部外品としての市販が、厚生労働省により認められました。各メーカーからも多くの製品が販売されるようになり、一般の生活者がセルフケアで用いる歯磨剤の選択肢の幅が広がりました。患者さんからも濃度の違いについて聞かれたり、高濃度フッ化物配合歯磨剤を勧める機会も増えたのではないでしょうか。しかし、たとえ高濃度のフッ化物配合歯磨剤を使用していたとしても、その使用方法が適切でない場合には、効果が十分に得られていない可能性があります。 筆者が留学中にスウェーデンのイエテボリ大学カリオロジー科で行った研究1)では、ペーストタイプのフッ化物配合歯磨剤(1,500ppm)の量(1cmまたは2cm)とブラッシング時間(1分または2分)、すすぎに使用する水の量(10mLまたは20mL)の3要因を組み合わせた8通りのブラッシング方法のうち、ブラッシング後60分までに歯間部におけるフッ化物濃度がもっとも高かったのは「歯磨剤2cm、2分間のブラッシング、10mLの水でのすすぎ」で、「歯磨剤1cm、1分間のブラッシング、20mLの水でのすすぎ」がもっとも低いフッ化物濃度を示しました(図1)。このことから「フッ化物配合歯磨剤の量」「ブラッシング時間」および「すすぎに使用する水の量」が、ブラッシング後の歯間部フッ化物濃度に有意な影響を与えることを示唆しているといえます。 そこで今回は、フッ化物配合歯磨剤の効果を左右する要因について掘り下げていきます。“効果的な使い方”を知って、患者さんへの指導に活かしましょう!24歯科衛生士 July 2021 vol.45P024-037_DH07_toku1.indd 24ppmフッ化物の効果が得られるかどうかは、その“使い方”にあり!石塚洋一 歯科医師・東京歯科大学講師濃度だけじゃない!石塚洋一Yoichi Ishizuka歯科医師博士(歯学)東京歯科大学 衛生学講座 講師山田美穂Miho Yamada歯科衛生士日本ヘルスケア歯科学会認定歯科衛生士Illustration:石山綾子※本稿では、フッ化物配合歯磨剤のフッ化物イオン濃度を500ppm前後:500ppm、1,000ppm以下:1,000ppm、1,000ppmを超えて1,500ppm以下:1,500ppmと表記します。図1 8通りのブラッシング方法によるブラッシング60分後までの歯間部フッ化物濃度(ppm)の平均値(n=8)と曲線下面積(AUC)の値(平均値±SD)歯間部唾液サンプルは、ブラッシング前と60分後まで採取し、フッ化物濃度はフッ化物イオン電極を用いて測定した。また、ここには示していないが、水でのすすぎを10mLから0mL(すすぎなし)にすると、フッ化物濃度が増加した。(ppm)601cm  1分   10mL2cm  1分   10mL1cm  2分   10mL2cm  2分   10mL50204030(文献1より引用改変)1cm  1分   20mL2cm  1分   20mL1cm  2分   20mL2cm  2分   20mL102030736±113510±72413±3710800600400AUC(Area under the curve405060(分)歯磨剤2cm、2分間のブラッシング、10mLの水でのすすぎがもっとも高かった366±35408±35200):333±261cm/1分/10mL340±38265±492cm/1cm/2cm/1分/10mLブラッシング方法(フッ化物配合歯磨剤の使用量/ブラッシング時間/すすぎに用いる水の量)2分/10mL1分/20mL2分/20mL1分/20mL2分/10mL1cm/2cm/1cm/2cm/2分/20mL歯科衛生士 July 2021 vol.45252021/06/11 10:45P024-037_DH07_toku1.indd 252021/06/11 10:45(文献1を改変)58濃度だけじゃない! 効果を左右する「使い方」に注目。フッ化物配合歯磨剤アップデートA1う蝕予防としての効果が明確に確立されているフッ化物配合歯磨剤の効果を最大限に引き出すための「使い方」と、その効果に影響を及ぼす要因を解説しました。表1 ダブルブラッシング1回目2回目Illustration:石山綾子、大野文彰、さかがわ成美、中小路ムツヨ〈引用文献〉1.日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会(編).う蝕予防の実際 フッ化物局所応用実施マニュアル.東京:社会保険研究所,2017;85-86.2.石塚洋一.文献でひも解くヒストリー フッ化物局所応用の現在地 第2回 フッ化物洗口.歯科衛生士 2022:46(2):53-60.石塚洋一東京歯科大学 衛生学講座 准教授歯科医師FROM まずは1日24時間という限られた時間のなかで、1回のブラッシングに30分など長い時間をかける必要があるかを考えてみましょう。たしかにブラッシングが苦手でプラークの除去に長い時間がかかってしまう方や、歯面に付着したプラークをきちんと取り除きたくて長い時間をかける方はいるかもしれません。しかしながら、歯ブラシだけで歯の隣接面や歯間部のプラークを除去するのは難しく、そのような方こそ歯ブラシだけではなく歯間部補助清掃用具(デンタルフロス、歯間ブラシ)を使用する必要があると考えます。 フッ化物配合歯磨剤を使用したブラッシングの途中で唾液(と歯磨剤)を吐き出さずにいた場合、ブラッシング中は、水ですすぐよりもフッ化物濃度は下がらないとは思われますが、よほど唾液が出ない方でないかぎり、30分間、途中で吐き出さないことは不可能ですし、あまり現実的ではありません。 そこで、プラークの除去に長い時間がかかってしまう方にはダブルブラッシング(表1)を提案してみてはいかがでしょうか。また、カリエスリスクが高い方には、4でフッ化物洗口剤を使用していただくとよいと考えます2)。ブラッシング中は、水ですすぐよりもフッ化物濃度は下がらないとは思われますが、あまり現実的な設定ではありません。読者の皆さんからいただいた質問に、各特集の著者の先生方に答えていただく毎年恒例の人気企画。今回は、2021年下半期(7月号~12月号)の特集・TOPICへの回答をお届けします。(編集部)TOPIC長時間のブラッシングで途中で唾液を吐き出さずにいた場合、フッ化物濃度は下がってしまうのでしょうか?「ブラッシング時間が長くなりすぎれば、途中で吐き出す回数も多くなり、口腔内のフッ化物濃度が下がってしまう可能性もあります」(P.32)とありますが、30分など長くブラッシングする方の場合、途中で吐き出さずにいてもフッ化物濃度が下がってしまうということはありますか?Q1読者が聞きたいこと、

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