歯科衛生士 2022年5月号_2
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F-F-F-F-F-F-F-Ca10(PO4)6(OH,F)F-F-F-F-F-F-F-F-F-F-F-F-酸酸酸酸May 2022 vol.46(文献3より改変)59 フッ化物応用は再石灰化促進の重要な要因です。F-(フッ化物イオン)の存在は再石灰化反応を促進します。再石灰化とは、脱灰で失われたミネラル(Ca[カルシウム]やP[リン])が回復する現象です。 従来は、フルオロアパタイトが形成され、酸に対する溶解度を低下させることが、歯質に対する主なう蝕予防メカニズムであると説明されてきました。歯の形成期にフッ化物が作用することにより、エナメル質の主な無機質であるハイドロキシアパタイト[Ca10(PO4)6(OH)2]のOH-がF-に置換され、フルオロアパタイト[Ca10(PO4)6F2]あるいはフルオロハイドロキシアパタイト[Ca10(PO4)6(OH)F]が形成されます1)。さらに、ハイドロキシアパタイトの結晶性が向上し、結晶そのものの化学的安定性が増大します。 しかしながら、近年のカリオロジー研究により、低濃度のフッ化物がイオンとして作用するのがもっとも重要であることが明確になってきました。低濃度のフッ化物イオンが存在している部位は、①エナメル質表面、②結晶周囲、③結晶内部の3部位です。う蝕予防にとっても、低濃度フッ化物イオンの重要度はこの順番です2)。結晶内部に取り込まれたフッ化物は、エナメル質が脱灰してからフッ化物イオンとして作〈引用文献〉1.石塚洋一,松久保 隆,木本一成.第8章 歯科疾患の予防方法 5 フッ化物による齲蝕予防方法.In:松久保 隆ほか(監).口腔衛生学2022.東京:一世出版,2022;275-287.2.飯島洋一.フッ化物についてよく知ろう う蝕予防の知識と実践.東京:デンタルダイヤモンド社,2010.3.日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会(編).フッ化物応用の科学 第2版.東京:口腔保健協会,2018;31-39.用しますが、口腔内環境に常在する歯質表面のフッ化物イオンや結晶周囲に吸着している低濃度のフッ化物イオンは、歯質や結晶周囲を全面カバー、あるいは、コーティングしている状態です。低濃度のフッ化物イオンが歯質表面や結晶周囲に吸着し、イオンコートとして被覆し、水素イオンが歯質表面や結晶内部を侵襲するのを防護しています(図1)。石塚洋一東京歯科大学 衛生学講座 准教授歯科医師図1 口腔内の低濃度フッ化物イオンのはたらきF-によって完全に歯質表面がコートされていない場合は、結晶周囲が酸性状態のとき、被覆されていない部分から脱灰が始まる。いずれもう蝕予防につながりますが、タイミングやメカニズムが異なります。A2応用法によって異なるフッ化物の効用について詳しく知りたいです。P.28の「表2 フッ化物の効用と応用法の関係」で示されたフッ化物の効用のうち「エナメル質の結晶性の改善」「フルオロアパタイトの生成」「再石灰化の促進」の3つは、それぞれ具体的にどう違うのでしょうか? このうちフルオロアパタイトの生成はフッ化物の全身応用により生じるということですが……。Q2 全部答えます。

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