歯科衛生士 2022年6月号
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 口腔内には、腸内に次いで体内で2番目にバラエティに富んだ微生物集団がすみついており、700種以上の細菌が歯の表面と口腔粘膜にコロニー(集団)を形成しています1)。近年の技術の進歩により、口腔微生物叢(口腔マイクロバイオーム)の複雑な構造が解明されつつあり、健康時および疾患時の役割について新たな知見が得られてきました。 これまでに、う蝕は口腔マイクロバイオームの乱れ(ディスバイオーシス)が引き起こす疾患であることを解説してきました(歯周病も同様です)。それでは、生まれたばかりの赤ちゃんの口腔内に、口腔マイクロバイオームはどのように形成されていくのでしょうか? 歯周病に罹患している人とう蝕に罹患している人で、口腔マイクロバイオームはどのように違うのでしょうか? 本稿ではまず、赤ちゃんの口腔内に細菌叢が形成されていく過程で、どのような要因が影響を及ぼすのかについて解説します。次に、う蝕を引き起こすディスバイオーシス、および歯周病を引き起こすディスバイオーシスについて、その引き金となる要因やそれを防ぐ方策について探っていきます。久保庭雅恵Masae KUBONIWA大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学准教授・歯科医師天野敦雄Atsuo AMANO大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学教授・歯科医師Illustration:寺田久美連載内で紹介している文献を、web上で見ることのできるものはリンクつきでまとめました。https://www.quint-j.co.jp/web/shikaeiseishi/index.php44令和のう蝕に関する皆さんの常識を、サイエンスベースで覆します! 令和のう蝕病因論(カリオロジー)は、ミュータンス連鎖球菌と砂糖だけじゃ語れないのです。第5回脱・昭和の常識!近年解明されてきている口腔マイクロバイオーム口腔マイクロバイオームはどのように形成されるのか令和のう蝕病因論(3)~口腔マイクロバイオームの最新情報~口腔微生物叢(口腔マイクロバイオーム)の実態について、ここ数年国内外で次々と研究成果が発表され、新たな事実が明らかになってきています。今回はこうした最新の知見もふまえて、口腔マイクロバイオームの乱れ(ディスバイオーシス)によって発症するう蝕と歯周病について見ていきましょう。

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