歯科衛生士 2022年6月号
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June 2022 vol.46結果、当初の予想よりも天然歯の保存が可能となった一症例を提示します。 患者さんは2016年に「右上の歯が痛い」という主訴で来院されました(表1)。初診時の所見を図1、2、次ページ図3、4に示します。歯周組織精密検査では、左右上下顎臼歯部に6mm以上のPPDがみられ、主訴部位の82には根尖にまで及ぶ重度の骨吸収が確認できました。線維性歯肉のため炎症はわかりにくいですが、歯間部に発赤、腫脹が認められ、321567の歯間部には降圧剤(ニフェジピン)の副作用と思われる薬剤性歯肉増殖症が確認できました。 患者さんはこれまで痛みがあって困ったときのみ歯科を受診していたということでした。歯科治療を継続して受けられなかった結果、歯科治療に関する知識や口腔清掃の技術について得る機会がなく、適切なブラッシング方法とモチベーションが定着しなかったため、プラークコントロールが不良のまま経過したと思図1 初診時の口腔内写真歯間部に発赤、腫脹が認められた。多数歯にわたってエナメル質が剥離し、実質欠損が確認できた。咬合に関しては、中心位から咬頭嵌合位に至る過程で正中が若干右に変位していた。2は舌側転位。右側がアングル分類Ⅱ級関係、左側がアングル分類Ⅱ級傾向。図2 初診時のデンタルエックス線写真主訴部位である82は根尖にまで及ぶ垂直性骨吸収像が認められた。全顎的に水平性骨吸収と垂直性骨吸収が混在しており、677には根分岐部病変が認められた。また、多量の歯石沈着がみられ、全顎的に骨レベルが不揃いであった。咬合性外傷をともなう歯周組織の破壊が考えられた。主訴以外も全顎的に歯周炎が進行71初診時 2016年

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