Journal of Aligner Orthodontics 日本版 2022年No2
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斎藤秀也 Shuya Saito, D.D.S さいとう歯科 〒063-0052 北海道札幌市西区宮の沢2条2丁目4-7 連絡先 E-Mail: shu-shu0720@outlook.jpJournal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2022 vol.2 issue 2キーワード 骨格性開咬症例、アライナー矯正治療、非外科的治療、カウンタークロックワイズローテーションジュ的な治療方法も存在したが、ガミースマイルなど顔貌の悪化を招く可能性があるため、必ずしも理想的な治療法とはいえなかった。また、外科的矯正治療にマルチブラケット型矯正装置を併用した場合は健康保険の適用となるが、「術前矯正+外科的矯正治療+術後矯正」という手順をふむこととなり、期間も3〜4年と長くかかる場合がある。近年はサージェリーファースト法(外科的矯正治療を先行して行う矯正歯科治療)もあるが、保険適用外の治療であり患者にとっては金銭面でもハードルが高い。また何より外科手術そのものを拒む患者も多く、非外科的な治療法の開発が望まれているところであった。 アライナー矯正治療では、アライナー型矯正装置が咬合面に介在することによって臼歯部にかかる咬合力を組み込むという特性をもっていること、これに加えてClinCheckソフトウェア上に臼歯部圧下の動きを組み込むという、この2つの作用を利用することで効果的に臼歯部の圧下を行い、骨格性開咬症例の改善ができるようになった。これは従来の矯正装置ではできなかった画期的な治療法である。その反面、治療選択肢が増えることで治療計画立案がより複雑になったことも事実である。斎藤秀也[北海道・さいとう歯科] 従来のマルチブラケット型矯正装置とアライナー型矯正装置は、歯の移動に関して、力学的な作用機序が異なる。つまり、装置の特性の違いによってそれぞれ得意な歯の移動と不得意な歯の移動が存在している。 どのような矯正装置でも矯正歯科治療における根本的な役割は同じであるが、矯正歯科治療の診断と治療計画において、用いる装置の得意な歯の移動を考慮すると、マルチブラケット型矯正装置を用いたときとアライナー型矯正装置を用いたときとで、治療計画が変わることがたびたびある。 矯正歯科治療の歴史を振り返ってみると、マルチブラケット型矯正装置を用いた場合、骨格性開咬はその治療難度が高く、外科的矯正治療に頼らざるを得ない症例が多かった。あるいは前歯部の絶対的挺出や便宜抜歯を併用し、前歯部の相対的挺出を行うカモフラー斎藤秀也97日本版オリジナルページ 症例報告緒言骨格性開咬症例に対する非外科的治療

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