nico 2018年2月
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 代用甘味料のはたらきを説明する前に、まずは「砂糖とむし歯菌」の関係をお話ししましょう。 砂糖、つまり「スクロース」は、化学的には「グルコース」(ぶどう糖)と「フルクトース」(果糖)という物質が結合してできています。 さてさて、皆さんが砂糖の入ったものを口にしたとき、スクロースの形で摂り込まれるのですが、そのときお口のなかにむし歯菌(主にミュータンスレンサ球菌)がいると、「待ってました」とばかりに飛びついてきます。 そして、むし歯菌のもつ酵素のはたらきでスクロースをグルコースとフルクトースに分解します(そのままでは食べづらいんでしょうね)。 そのときむし歯菌は、グルコースとフルクトースを食べるだけでなく、あまったグルコースをつなげていって「グルカン」というネバネバした物質にし、衣服のように身にまといます。彼らはこのネバネバで歯の表面にしっかり付着して、お口のなかの唾液に流されないようにするんです。 それでもまだスクロースがあるようなら、さらに分解してグルコースをつなげていき、グルカンを大量につくります。そうなるとまるで綿あめのようにネバネバの層が厚くなっていきます。このネバネバの層はむし歯菌を外敵(唾液や抗菌薬)から守る格好の住居となります。 さて、このネバネバの層のなかには、むし歯菌以外の細菌も入り込んできます。かくして、たくさんの細菌が存在するネバネバの層が完成。これがいわゆる「バイオフィルム」ですね。バイオフィルムはスクロースの摂取が続くとどんどん成長して、大きく頑丈になっていきます。 というわけで、むし歯菌にとって、スクロースは栄養たっぷりのごちそうであるとともに、身を守る衣服や、生存に欠かせない住居のもととなるのです。いわば「衣食住」に欠かせないものなんですね。クロースを分解してできたグルコースをつないで、むし歯菌がさらにグルカンをつくります。つながれたグルカンはむし歯菌の周りを厚く取り囲んでいきます。むし歯菌にとって砂糖は「衣食住」の基本細菌が自分たちのつくるネバネバで寄り集まったかたまり。一度形成されると、唾液の波も抗菌薬もへっちゃら。除去するには歯ブラシや歯科医院のクリーニングなどで物理的に壊すべし。バイオフィルムグルカンからネバネバの層をつくる。バイオフィルムがつくられる。ス量のグルカンがつながれてバイオフィルムが完成。むし歯菌以外の細菌も入り込み、細菌たちの集合住宅のようになります。 細菌たちは糖を食べて酸を産生し、建物の立つ地面(=歯面)を腐食させていきます。これがやがてむし歯となるのです。大412018年2月号

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