nico 2018年4月
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中原 患者自身の細胞に由来するので、感染や免疫反応(移植後の拒絶反応)の恐れがなく、体外で培養するときも、移植をしたあとも、がん化したり腫瘍化したりするリスクがありません。―がん化・腫瘍化のリスクがないというのは重要ですね。変化する力や増える力はどうなんでしょう?中原 からだのほぼすべての細胞に変化できるiPS細胞と比べ、変化できる細胞の種類は限られています。くわえて、細胞の増える力にも限界があり、活発に増えたあとは徐々に細胞の寿命で増えなくなります。ですが逆に、この「寿命があること」が組織幹細胞ががん化しない理由でもあります。 私の研究の範囲では、培養の過程や動物実験において、移植後にがん化したケースは一度もありません。ですから人体への移植後もがんをつくる可能性は極めて低いといえます。そして、その組織幹細胞が豊富に得られるのが――。―「抜去歯」というわけですね!―抜去歯というと「抜かれた歯」のことですが、どこに幹細胞が含まれているんでしょう?中原 歯のなかにある神経(歯髄)や、抜かれた歯に付着した組織に組織幹細胞が豊富に含まれています。歯の根ができあがって成長が終わった歯(完成歯)では、歯し髄ずいと歯し根こん膜まくから。歯の根ができあがっていない成長途中の歯(未完成歯)では、歯し乳にゅう頭とうと歯し小しょう嚢のうから採取されます。乳歯では、歯髄から幹細胞が採取できますね。―抜かれた歯ならどんな歯でもいいのでしょうか?中原 歯周病で抜けた歯や、重度のむし歯で抜かざるをえなくなった歯、ぶつけたりして抜け落ちた歯は適しません。そうした歯には細菌やカビによる汚染(コンタミネーション)が予想されるので、取り出した細胞の培養がうまくいかなくなる可能性が高いからです。 対象となるのは、疾患のないきれいなお口から抜かれた親知らずや乳抜去歯は幹細胞の宝庫!!歯の根(歯根)を覆う軟組織。歯の根とあごの骨をつないでいる。抜かれた歯の根の表面に付着しているが、肉眼では観察は困難。歯根膜歯冠を覆う組織。歯のセメント質や歯根膜、歯の周りの骨をつくる。「嚢のう」は「袋」のこと。歯し小しょう嚢のう未完成の歯根の先端にある歯髄組織。象牙質や歯髄をつくる。「乳頭」は「球状の小突起」のこと。歯し乳にゅう頭とう歯の幹細胞はどこから取れる?完成歯 歯の根ができあがっている歯歯小嚢歯乳頭未完成歯歯の根ができあがっていない歯歯根膜歯髄(歯の神経)断面歯冠歯根42

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