nico 2019年7月号
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てL8020乳酸菌は、悪い菌を破壊したり、活動を抑制するはたらきもあります。――そもそもL8020乳酸菌はどのように見つかったのでしょうか。二川 私の専門は、もともとは「補ほ綴てつ」という入れ歯やインプラントなどでお口の機能を補う分野でした。それで、医局の出張病院で、先天的にからだが不自由なかたや、精神に障害を負われたかたを診させていただいていたんです。――障害者歯科のお仕事ですね。二川 ええ。そうしたかたは、ご自分の力のみではほとんど歯みがきができません。ですから、補綴治療をしても、自分でケアのできるかたなら10~15年もつようなものが、3~4年でダメになってしまいます。――そんなに早くですか。二川 一方、私は大学では入れ歯に形成されるバイオフィルム(プラーク、良くも悪くもなる菌もいます。――善玉菌、悪玉菌、日和見菌ですね。二川 そのとおり。お口のなかは、たくさんの細菌がせめぎ合って、バランスで成り立っています。悪い菌が増えてバランスが崩れると、病気になります。これは腸内も同じです。――悪い菌というのは、むし歯菌や歯周病菌でしょうか。二川 そうです。ストレプトコッカス・ミュータンスといったむし歯菌の代表的な菌種や、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)をはじめとする歯周病菌は百害あって一利なし。とりわけ悪い菌です。 しかし、お口のなかの細菌叢を解析してみると、悪玉菌はごくわずか。口のなか全体に100の菌がいるとするなら、歯周病菌は0・01%程度しかいません。――そんなに少ないんですか。二川 それが0・02%になると、歯ぐきの炎症が増えるなどの変化が起きます。細菌叢の面からお口の健康を考えると、悪玉菌が一定以上に増えないようにするのがカギとなります。 そういう意味では良くも悪くもない菌たちも大切で、彼らがいっぱいいてくれないと、スペースが空くので悪い菌がその分増えてしまいます。――なるほど。二川 口腔内細菌叢は、「口内フローラ(植物相)」とも言うのですが、言いえて妙で、たしかに植物のようなものです。お口全体を庭でたとえるなら、きれいないい香りのする花が善玉菌。悪臭をまき散らし、庭の土壌(歯や歯ぐき)にも悪影響を及ぼす毒草が悪玉菌。庭のすき間を埋める雑草が日和見菌といったところでしょうか。毒草が繁殖しないようにするには、空いたスペースを雑草に埋めてもらうことも大切なんです。――たしかに雑草にはそういうはたらきもありますね。でもそれより、きれいな花の数を増やすほうがいいのでは?二川 それがつまり、L8020乳酸菌のコンセプトです。良い菌をお口に供給して、悪い菌の増殖を防ぐ、あるいは悪い菌の増えるスペースをあらかじめ占有するのです。くわえ「自分で歯みがきできない人に何かできないか」が出発点歯し垢こう)の研究をしていました。そこで、お口のなかの微生物を利用する方向で、障害をもったかたに何かできないかと考えました。たとえば、「食べるだけ」でむし歯や歯周病になりにくいお口の環境をつくるような製品の開発です。――いわゆるプロバイオティクスの概念ですね。二川 そのとき着目したのが乳酸菌です。乳酸菌はもともと口腔内細菌叢のメンバーで、しかもヨーグルトなどで私たちの食経験も豊富ですから、うってつけだと思ったんです。392019年7月号

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