nico 2019年9月
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――前編でご紹介いただいた、「定期的メインテナンス」の効果には驚きました。受けていない人にくらべて、むし歯が75分の1になるとは!熊谷 むし歯だけじゃないですよ。同じ論文に、下のグラフのような歯周病予防の効果を調べたデータも出ています。メインテナンスを定期的に6年間受けたら、歯周病の発症の指標である「4ミリ以上の歯周ポケット」が、受けなかった人の14分の1だったとね(51歳以上の場合)。――歯周病予防の効果もすごい!熊谷 この著名な論文が発表されてからすでに40年。欧米では歯科医院で定期的にメインテナンスを受けるスタイルがすっかり定着しています。――でも日本では……。熊谷 前編でもお話ししましたけど、日本では「痛くなってから歯科医院へ」がいまだ一般的です。健康保険によりポケットマネーで治療できますからね。これも前編の繰り返しになりますが、むし歯や歯周病の原因であるベタベタのバイオフィルムを減らさないまま「痛くなったら歯科医院へ」と対症療法を受けても、似たような問題がまた起きて、そのたび治療が必要となり詰め物や被せ物が増えてしまう。まして歯周病の場合、痛みが出にくいから、歯科医院に受診した頃にはすでに手遅れで、抜歯になってしまうこともある。――歯の悩みを抱え、つらい思いをしている中高年のかたは多いです。熊谷 左ページの写真が日本人の平均的なお口のなかですが……。――治療した歯が多いですね。熊谷 詰め物や被せ物は、毎日強い力で噛み酷使されるので、いつかは傷みます。しかも削って治療した歯は、健康な歯にくらべバイオフィルムの出す酸や噛む力に弱いんです。――だから予防が大事だと。熊谷 そう。原因が明らかなんだから、その原因を減らせばいい。そうまずは前編のおさらいから。自分の未来と社会の未来のために。一人あたりの平均歯周ポケット数(4ミリ以上)修復物の10年生存率は?●年に1度公立の歯科で お口のチェック●問題が見つかれば治療●歯みがき指導を含め 予防指導と 予防処置は6年間なし定期検診のみを受けた人定期的にメインテナンスを受けた人●最初2年は2ヵ月ごとの メインテナンス●その後4年は3ヵ月ごとの メインテナンス●内容:プラークの染め出し、 歯みがき指導、歯石除去、 クリーニング(PMTC)青山ら(2008)より一部改変引用修復物の種類平均生存率コンポジットレジン60.4%大きな詰め物67.5%クラウン55.8%ブリッジ31.9%P.アクセルソンとJ.リンデの論文(1981)から(ポケット数)041612851歳~36~50歳~35歳調査開始時メンテ6年後調査開始時メンテなし6年後38

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