nico 2019年9月
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――それはすごいです。熊谷 いま日本では、後期高齢者の89%が入れ歯を使っていますが、予防で歯を残してこの数字をグッと減らせたら、日本人の健康寿命(自立した生活を営める年齢。現在、平均寿命より10年も短い)がおそらくかなり延びるでしょう。よく噛めると体力低下や認知症の予防にもなる。こうしたデータが続々と報告されていますよね。――たしかに!熊谷 だから、自分の未来と社会の未来のために、ぜひ歯についての価値観を見直してほしいんです。社会保障費の増大というピンチを、自分の未来を選択し直すチャンスにしてほしい。――でも先生、前編のお話で、健康維持のためのメインテナンスは自費扱いだとおっしゃっていましたね。 熊谷 そう、予防のためのメインテナンスは、「治療」じゃないから健康保険の枠外。そういう決まりです。――正直言うと、敷居が高いなあというかたも多いと思うんですけど。熊谷 美容院とか理髪店に行くくらいの費用で歯が守れるわけだから、自分の未来への投資と思えばね。状態が良好なかたなら、半年に一度程度のメインテナンスでも大丈夫ですし。それと、じつは予防メインテナンスを推進する新たな動きもあるんです。――へえ、どんな動きでしょう?すれば将来歯で苦労せずにすむし、国の財政を圧迫している医療費の削減にも貢献できる。「予防医療は効果が読めないから、社会保障費の削減の役には立たない」という意見もありますけど、歯科については杞憂ですよ。メインテナンスの効果は、世界中ですでに実証されているんだから。――なるほど。たしかにそうですね。熊谷 たとえばスウェーデンではね、大学の歯学部の授業から総入れ歯のカリキュラムをなくす検討がはじまっています。予防が浸透した結果、高齢者の総入れ歯のニーズが激減したから。日本人の平均的なお口のなか定期的にメインテナンスを受けている患者さんの究極の目標は「生涯28本全部の歯を残すこと」。10代40代70代30代60代20代50代80代KEEP28392019年9月号

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