nico 2020年2月号
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がスッと入るような遊びがありません。そのため麻酔薬が注入されると、圧迫痛が出やすいのです。 歯ぐきへの麻酔薬の注入には強い圧が必要で、歯科医師は、強い力をかけられるゴツイ注射器をグッと握り、親指と人差し指で注射器に圧を加えて注入していきます。 しかしそれでいて薬液の注入と針先の進入はごくゆっくりと進めなければなりません。「早く効かせてさし上げたい」という思いで、急いで麻酔薬を注入すると圧迫痛が出やすいからです。 また、加える圧は、一定に保たれなければなりません。注入に緩急があっては、これまた圧迫痛の原因になるからです。 歯科の麻酔には、このように他科では必要とされないような細やかな配慮と高度な手技が必要です。患者さんの不快感を減らし安全に治療ができるよう、歯科医師は日夜腕をみがいています。この特別企画では、歯科が行っている努力と工夫の一端をご紹介したいと思います。浸潤麻酔と同じく局所麻酔(部分麻酔)の一種です。歯を包んで歯と骨をつないでいる靱帯「歯根膜」に麻酔薬を注入し、歯の周りに一気に効かせる方法です。右ページの浸潤麻酔が十分に効かないときに用いられる方法で、追加の麻酔注射として行う場合もあります。麻酔薬が神経に届きやすくスムーズに効くのが利点です。局所麻酔(部分麻酔)の一種ですが、浸潤麻酔や歯根膜注射よりも広く長く効きます。あごを通る太い神経の近くに麻酔薬を注入するので、たとえば下あごの神経1ヵ所に注入するだけで、下あごの片側の広い範囲の歯に効きます。親知らずの抜歯やインプラントなどの手術や、骨が厚くて浸潤麻酔がなかなか効かないかたの奥歯の治療などに用いられます。歯し根こん膜まく注射つつーっとスムーズに効く伝達麻酔広範囲にしっかりと効く ●歯の周りが汚れていると、針や薬液で細菌を 歯ぐきに押し込んで軽い炎症が起きることが ありますが、数日で治ります。●歯をおおう歯根膜に麻酔を作用させるため、 1~2日間、噛むと違和感が残りますが、 心配はいりません。MEMO●治療後もしばらく麻酔の効果が続いて くちびるや舌にしびれが残り、効果が なくなるのに2時間ほどかかることもあります。●注射をした際に、あごの関節の周りの筋肉が 針で傷つき違和感が出ることがありますが、 数日で治ります。MEMO神経の近くに麻酔薬を注入片側の歯全体に効くあごを通る太い神経歯根膜432020年2月号

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