nico 2020年4月号
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かりに思いながらも、からだの骨に深刻な問題が見られず日常生活にさしつかえもないと、それが病気の影響だとは気づかず、治療の機会を逃してしまうかたがおられるのです。 よい薬が開発され、重症型のお子さんが救われるようになったいま、つぎの課題として注目されているのが、「軽症型の患者さんをどう救うか」です。そうしたいわば「隠れ低ホスファターゼ症」の患者さんを歯科で早期発見したいとお考えとか?仲野 街の歯医者さんや自治体の歯科健診においでになるとすれば、まさに後者の、軽症型の低ホスファターゼ症のかたですからね。重症型のお子さんが歯科にかかる場合は、通常かかりつけの小児科から小児歯科専門医に直接依頼が来ますので。なるほど。でも、なぜ歯科で?仲野 軽症型の低ホスファターゼ症のお子さんに起きやすいのが、「乳歯の早期脱落」だからです。からだの骨には症状が出ず、歯だけに症状が出る患者さんもいます。 永久歯の生え替わりの時期になる前に、乳歯の前歯がグラグラしてきて抜けてしまう。ぶつけたりした拍子にポロリと抜けてしまうこともあります。とくに、下の前歯が多いですね。それはたいへん! どうしてそんなことが?仲野 健康な歯は、歯の周りを包んでいる歯根膜という丈夫な靱帯によって、あごの骨にガッチリくっついています。歯根の外側にあるセメント質とあごの骨をしっかり固定しているので、よほどのケガや重度の歯周病でないと抜けません。 でも低ホスファターゼ症のお子さんの場合、歯のセメント質のできが悪いうえ歯根膜も弱く、しっかりと固定されていないために抜けやすいんです。なかでも前歯が抜けやすいのですが、これは根っこが奥歯のように複数でないために、くっついている面積が少ないからです。歯科だから早期発見できます。Zoom up!Zoom up!歯根の周りのセメント質とあごの骨を、歯根膜がガッチリつないで丈夫にくっつけています。あごの骨もしっかりと歯を支えています。健康な乳歯はあごの骨にガッチリくっついています。歯根の周りのセメント質がまばらでもろく、歯根膜も弱くて、歯があごの骨にしっかりくっついていません。歯を支えるあごの骨も密度がありません。低ホスファターゼ症の乳歯はくっつきかたがゆるいです。実際の乳歯の像です。セメント質がガタガタしています。あごの骨セメント質セメント質あごの骨歯根歯根膜歯根膜歯根セメント質あごの骨歯根膜432020年4月号

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