nico2020年9月号
8/9

むし歯に塗って、進行を抑えます。最近でも除菌スプレーや除菌シートに銀(銀イオン)が配合されたものがあります。銀の殺菌・抗菌作用が、塗布したところの細菌、つまりむし歯菌を攻撃し繁殖を抑えることで、むし歯の進行を抑制するわけです。 サホライドは1970年2月、日本にむし歯がまん延していた当時に生まれました。進行の速い、乳歯のむし歯を食い止めるために何か手はないのか。そう思って、当時からむし歯予防効果が知られていたフッ素と、抗菌作用の強い銀(そのころは硝しよう酸さん銀ぎんとして口内炎などの治療に用いられていました)に着目して、新しい薬剤の開発に取り組みました。 いちばんの難題は、銀をどうやって薬剤中に安定させるかでした。銀は溶液中で沈殿しやすく、またフッ素とあわせてフッ化銀としたときには、空気中の水分をどんどん取り込んでしまいました。保管中や塗布中に性質が変化してしまうのでは、薬いちばんの難題は銀の安定化だった。フッ素と銀が作用するしくみ●むし歯が進行しているところは、表面がグズグズにやわらかく軟化しています。そこにサホライドが塗布されると、歯の内部にフッ化物イオンと銀イオンが取り込まれます。銀イオンが内部の有機質(コラーゲンなど)に結びつき、光に当たることで黒くなります。●むし歯が進行していないところには、銀イオンは入り込みません。ですから黒くなることはありません。●フッ化物イオンは、塗布された場所から唾液中に溶け出し、唾液による歯の修復を促進したり、歯の結晶を強化します。また、軟化した象牙質に取り込まれると、象牙細管を封鎖して知覚過敏を抑制します。*先ほど「むし歯のまん延は日本では過去のもの」とお話ししました。しかし、重度のむし歯に苦しむお子さんがいなくなったわけではありません。↑の写真は予防を熱心に行っている歯科医院からご提供いただいたものですが、同院は12歳児の患者さんの約90%がむし歯ゼロ。そのような医院ですら、重度のむし歯で来院するお子さんがまれにいらっしゃるのです。●サホライドは、主に乳歯のむし歯に塗ることで、むし歯の進行を遅らせる効果が期待できます。●永久歯のむし歯にも同じように作用しますが、審美性の問題から、基本的には乳歯に使用されます。塗布後塗布前初診で訪れた5歳のお子さん。むし歯がかなり進行しています。塗布中マイクロブラシや綿球でサホライドを塗布します。むし歯になっているところが黒く変色します。(写真提供:宮城県・グリーンヒルズ・デンタルクリニック 佐藤長幸 院長/高橋 優 歯科衛生士)銀イオンフッ化物イオン銀の作用で変色した病変部エナメル質象牙質象牙細管殺菌・抗菌歯の結晶の修復・強化Ag+Ag+F-F-392020年9月号

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る