nico2021年4月号
3/9

「5つの理由」の2つ目は認知症との関連です。認知症を悪化させる原因が、何とお口のなかにもいることがわかってきたのです。 歯周病菌のなかには、親玉ともいえる病原性の高い菌がいます。その名はポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)。頭文字を取ってPピージーg菌とも呼ばれます。 この菌が怖いのは、歯周病を悪化させるように周囲の細菌にはたらきかけるだけでなく、歯周病菌のなかでも際立って強力なたんぱく質分解酵素(ジンジパインといいます)をもっていることです。たんぱく質を分解して、得られたアミノ酸をエネルギー源とするのです。 歯周病が進行し、ひどい炎症を起こした歯ぐきは褥じょくそう瘡——いわば床ずれのようにグズグズになっています。その傷口から菌が体内に入っていきますが、それはPg菌も例外ではありません。 Pg菌が体内に入り込むと何が起きるのか。近年、恐ろしいことがわかってきました。脳に行ったPg菌が、たんぱく質分解酵素で神経細胞を変性させ、アルツハイマー型認知症を進行させている可能性があるというのです*。 認知症は複合的な要因で起こります。これまでも、お口からの要因としては「歯を失って噛めなくなると脳に刺激が行かず、認知症になる」といわれていました。しかし、歯周病菌そのものが認知機能を奪っている可能性があるというのは、誰もが想像すらしなかったニュースでした。 左上に並んだ写真は、「歯周病になっているかたの歯ぐき」と、「健常者Questionえ?! 認知症に歯周病が関係するんですか!それってどういうことでしょう、気になります!PatientDoctor歯周病菌の親玉、ポルフィロモナス・ジンジバリス。この恐るべき菌は歯周病を悪化させるだけでなく、脳に入り込んで悪さをすると考えられてきているのです。「歯周病はたかがお口の病気」と甘く見てはいけません。nswerAたんぱく質を壊す酵素をもつPg菌。歯周病が認知症の進行に関与?!理 由2*Stephen SD et al. Sci Adv 2019. Jan 23; 5(1): eaau3333.1616

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る