nico2021年4月号
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のかたの海馬」(記憶をつかさどる脳の部位)、「アルツハイマー型認知症のかたの海馬」の組織写真です。Pg菌が出すたんぱく質分解酵素(ジンジパイン)を茶色で染色しています。 歯周病のかたの歯ぐきの組織は、茶色に染まっています。それと同じように、アルツハイマー型認知症のかたの海馬も色が茶色になっています(健常者のかたの海馬は染まっていない点に注目)。つまり、Pg菌が脳に入り込み、分解酵素を出してまわりの細胞を破壊しているのです。 加齢にともない歯周組織や免疫が弱まると、歯周病になりやすくなります。だからこそ元気なうちから歯周病を予防すること、もしなってしまったとしたら、歯医者さんの力を借りて悪化させないように管理していくことが大切となります。 なお、Pg菌のたんぱく質分解酵素については、酵素の働きを阻害する薬の臨床試験が進められています。ジンジパイン阻害薬というのですが、認可された暁あかつきには、認知症治療に革命が起こることでしょう。*Dominy SS et al. Porphyromonas gingivalis in Alzheimer's disease brains: Evidence for disease causation and treatment with small-molecule inhibitors, Sci Adv 2019, 5 (1): eaau3333 (CC-BY 4.0) **写真提供:株式会社オルコアPg菌**歯ぐきから血管、そして脳へと入り込むPg菌プラーク内のPg菌が、炎症を起こした歯ぐきから血管に入る。血流にのり体内をめぐったPg菌は、脳に入り込みたんぱく質分解酵素を分泌。脳の神経細胞を変性させてアルツハイマー型認知症を悪化させる可能性が指摘されている。歯周病患者の歯ぐき*アルツハイマー型認知症患者の海馬*健常者の海馬*Pg菌の出すたんぱく質分解酵素(ジンジパイン)が茶色に染色されている。歯周病患者の歯ぐきの組織とアルツハイマー型認知症患者の海馬の組織が、同じように茶色く染まっている。歯プラークや歯石炎症を起こした歯ぐき失われていくあごの骨血流にのって脳へ(参考:Ryder MI. Porphyromonas gingivalis and Alzheimer disease: Recentndings andpotential therapies. J Periodontol 2020)歯ぐきから体内へ172021年4月号17

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