nico 2021年9月号
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ニコチンには「からだに吸収されやすい」という特徴があります。煙やエアロゾルに含まれる形で肺に入ったニコチンは、肺の血管などから急速に全身に広がります。肺に入る前には当然お口にも触れており、お口の粘膜からも吸収されます。濃度の高低によって違いはあるものの、ニコチンはお口の細胞に多種多様な害をもたらします。歯ぐきや頬、口蓋、舌など、お口の粘膜細胞には日々の活動で常に負荷がかかっており、微小な傷が絶えません。その修復を促すために、張り巡らされた血管が酸素や栄養を運んでいます。123   くん   ニコチンには血管収縮作用があり、歯ぐきの血管を収縮させることで血流量を減少させます。すると、歯ぐきに酸素や栄養が十分に行き渡らなくなり、細胞の修復機能が落ちていきます。また、ニコチンは細胞の遺伝子を傷つけ、がん細胞の増殖や転移などを誘発します。 ①炎症を起こしやすくする:歯周病になっているとき、歯ぐきでは歯周病菌とからだの免疫細胞が戦っています。その際に細胞から生み出される炎症性物質は、歯ぐきの細胞やあごの骨の破壊につながります。ニコチンはこの炎症性物質の産生を促します。 ②歯ぐきの弾力を失わせる:歯ぐきの表面は角化して硬くなっていますが、内部は弾力のある組織です。ニコチンは内部の細胞の角化を進め、歯ぐきの弾力を失わせます。すると血流が悪くなり、栄養の供給や老廃物の除去機能が落ちていきます。 ③細胞を弱くする:ニコチンにより活性酸素や一酸化窒素がつくられ、歯ぐきの細胞が酸化・老化します。歯根膜は、歯の根とあごの骨を結びつけている細胞の集まりです。歯根膜があるおかげで、歯は骨とくっついているのです。歯根膜の細胞も、イラスト-1硬くなり弾力を失っている歯ぐきへの影響粘膜全体への影響歯し根こ膜まへの影響歯ぐきへの影響イラスト-142喫煙者の歯ぐき非喫煙者の歯ぐきみずみずしく弾力があるニコチン歯周病菌免疫細胞炎症性物質歯ぐきの弾力を失わせるニコチンは歯ぐき内部の細胞の角化を進め、弾力を失わせます。血流が悪くなり、栄養の供給や老廃物の除去機能が低下します(歯ぐきの着色はニコチンの作用とは別と考えられています)。炎症を起こしやすくする歯周病菌と免疫細胞が戦う際に細胞から生み出される炎症性物質は、歯ぐきの細胞やあごの骨の破壊を起こします。ニコチンはこの炎症性物質の産生を促します。細胞を弱くするニコチンにより活性酸素や一酸化窒素がつくられ、歯ぐきの細胞が酸化・老化します。ニコチンがもたらすお口への害

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